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建モノがたり

SEE SEA PARK(シーシーパーク)(福井県おおい町) 

透明な箱重ねた「脱ハコモノ」

館内から漏れる光で複雑な形が浮かび上がる。開館午前10時~午後10時(営業時間は店舗、施設ごとに異なる)
館内から漏れる光で複雑な形が浮かび上がる。
開館午前10時~午後10時(営業時間は店舗、施設ごとに異なる)
館内から漏れる光で複雑な形が浮かび上がる。開館午前10時~午後10時(営業時間は店舗、施設ごとに異なる) 西棟のアトリウム。天井には方形屋根形のルーバー WEST棟とEAST棟をつなぐSTREETから アトリウムの机やソファはだれでも気軽に使える アトリウムには自由に読める本が置かれている アトリウムに置かれているマンガ STREETにもテーブルとイスを設置したカフェダイニング「Cerchio」

若狭湾に面して道の駅やホテル、大型遊具が人気の児童施設が集まるエリア。増殖する細胞を思わせる建物は何?

 「SEE SEA PARK」は福井県南西部、人口約8千人のおおい町に2022年7月にオープンした。新規事業を町が支援する「チャレンジショップ」を含め飲食店や物販店、アウトドア用品店など約20の店やオフィスが入る複合商業施設だ。

 いくつもの透明な箱が宙に浮かぶような全体の構成は、わき上がる雲や増殖する細胞を連想させる。設計者の森下修さんは「雲の下に守られた自然環境のように、大きな空間の中に、それぞれの個性が際立つ。同時に、周辺とつながり人が集まる場所となること」を意識した。

 平屋の東西2棟で計約2740平方メートル。4・8メートル四方、高さ2・4メートルの透明な箱(ユニット)は計72個、床面からの高さはそれぞれに異なる。透明なフッ素樹脂膜(ETFE)製で、内側には方形(ほうぎょう)屋根のような木製ルーバーを設置。スリットを介した日差しがやわらかな光の模様を描く。

 ユニットの集積は下部の屋内環境の調節にも役立つ。夏は木のルーバーで受け止めた太陽光の熱気をETFE面から外部へ放出。冬はユニット内の空気が外気との緩衝材になる一方、日ざしで暖まった空気をファンで室内へ戻す。

 「脱ハコモノというか、これまでにない斬新な建物にしたかった」。施設を運営する民間まちづくり会社「リライトおおい」の渡辺敢太さんは、約20件の応募があったプロポーザルから森下さんの案が選ばれた経緯をこう話す。

 原発が立地するおおい町には公共施設が数多い。ほかと違う特色をという意気込みは、名称にも込められている。「公園のように、子どもたちにもお年寄りにも、いろんな人に来てほしい」

 机やベンチが置かれた広々としたアトリウムは、何をするでもなく、過ごすことが心地よい。平日の夕方は、近くのスケートボードパークで遊んだ子どもたちの姿も目立つという。

(伊東哉子、写真も)

 DATA

  設計:森下修/森下建築総研
  階数:地上1階
  用途:オフィス、店舗など
  完成:2022年

 《最寄り駅》 若狭本郷


建モノがたり

 チャレンジショップのひとつ、自然薯(じねんじょ)とろろ iheee(イヘェ、電話0770・67・3316)は、おおい町産のジネンジョを使ったとろろそば(990円)や麦飯とろろ丼定食(1330円)を提供する(いずれも6月中旬ごろ~11月末ごろは大和芋を使用、そば930円、定食1270円)。プリン(320円)などのスイーツも。午前11時~午後6時。原則(水)休み。

(2023年8月29日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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