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アートリップ

「OSAKA VICKI(大阪・ヴィッキー)」
ロイ・リキテンスタイン作(大阪市中央区)

繁華街にポップな彩り

「ヴィッキー」が視線を投げかける=楠本涼撮影
「ヴィッキー」が視線を投げかける=楠本涼撮影
「ヴィッキー」が視線を投げかける=楠本涼撮影 心斎橋はモダンな石造りの橋だった=楠本涼撮影

 大阪有数の繁華街・心斎橋の一角に、金髪の女性を描いた巨大なイラストがある。アメリカのポップアートを代表する画家、ロイ・リキテンスタイン(1923~97)の作品だ。

 大きさは縦約37×横約15メートル。心斎橋駅などとつながる地下街・クリスタ長堀の空調装置が入ったビルの壁に描かれている。

 地下街をプロデュースした環境デザイナーの福田武さん(75)によると「ここはアメリカ村の入り口。アメリカを象徴するものが必要だと思った」。身近な漫画や広告のイメージを描き、大衆性、無名性といったアメリカの消費社会の本質を捉えたリキテンスタイン。ニューヨークの画廊まで交渉に赴き、作家本人にも会ったそうだ。

 「ヴィッキー! 君の声が聞こえたと思ったよ」と男性に呼びかけられて、振り返る女性。作家は、64年に制作した自身の原画に、ビルの縦長の壁面に合わせて額縁やブラインド、下部の網点を描き加えた。亡くなる直前のことだった。

 長年、管理を担当した鈴木勇さん(65)は「大阪らしいとよく言われます」と笑う。鮮やかな赤、青、黄が巧みに配された画面。すぐ脇を阪神高速が通るため、府警が「目を引いて危ない」と懸念したという。だが運転手からは死角にあたる位置にあり「高速から見えれば、きっと心斎橋の目印になった」と福田さんは残念がる。

(小寺美保子)

 クリスタ長堀

 大阪市を東西に貫く長堀通の地下街。全長約730メートルあり、約100店舗が入る。地上も含めてアート作品が約20点ある。壁画は、リキテンスタインの原画を元に開業翌年の1998年に完成。原画制作・著作権使用料5千万円を含む費用は、日本宝くじ協会が助成した。地上には、かつてかかっていた心斎橋が横断歩道に姿を変え、欄干などが残る。

 《アクセス》 地下鉄御堂筋線・長堀鶴見緑地線心斎橋駅、四つ橋線四ツ橋駅下車。


ぶらり発見

アメリカ村

 ミナミと呼ばれる界隈にある心斎橋。

 地下鉄心斎橋駅から徒歩3分。若者が集まるアメリカ村写真=は、古着屋やレコード店、大阪名物・たこ焼きの店などが並ぶ。一角のビルには、地元出身のイラストレーター黒田征太郎さんが描いた壁画「ピース・オン・アース」がある。問い合わせはアメリカ村の会事務局(06・6258・5002)。

 長堀通と道頓堀を結ぶ心斎橋筋商店街(TEL6211・1114)は国内有数の商店街。約600メートルのアーケードに衣料店や飲食店など約180店が並ぶ。

(2016年4月12日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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