アートリップ

おひるねハウス 
南川祐輝作(愛知県西尾市)

潮風が吹き抜ける家

現在の「おひるねハウス」は2013年に建て替えた2代目=谷本結利撮影

現在の「おひるねハウス」は2013年に建て替えた2代目=谷本結利撮影

  • 現在の「おひるねハウス」は2013年に建て替えた2代目=谷本結利撮影
  • 対岸には南川さん作「イーストハウス」=谷本結利撮影

 三河湾の約5キロ沖合に浮かぶ佐久島。浜辺に3メートル四方の黒い箱がどしりと立つ。はしごを上って寝ころぶと、潮風とさざ波の音が響いた。

 「おひるねハウス」は、15年前に始まった芸術による島おこし「三河・佐久島アートプラン21」の一環だ。「アートというより、海を見ながらボーッとするための家です」と、作者である名古屋市の建築家南川祐輝さん(47)。2004年、知人のアートマネジメント会社社長から「島の魅力を引き出すオブジェを作ってほしい」と頼まれ、制作した。

 周囲11・4キロの小さな島は、人口約250人。半数が65歳以上で、島民の多くがアサリ漁に従事する。バスも走らず、コンビニもない。潮風に乗って、ゆっくりと時間が流れている。

 南川さんは島民やボランティアの協力を得て、「家」の基礎を鉄でくみ上げ、杉板を重ねた。黒い塗装は、潮風で壁が傷まないようにコールタールを塗る、島の伝統的な家並みをモチーフにした。

 「島の風景に溶け込んで絵になりますね」と、富山から来た竹林由梨さん(17)がカメラを構える。作品は今、写真をSNSに投稿する若者の間で大人気だ。5月の連休には、1時間待ちの行列ができた。南川さんは言う。「ぜひ、昼寝もしてくださいね」

(曽根牧子)

 三河・佐久島アートプラン21

 2001年から続く現代アートを軸にした佐久島の活性化事業。アートとして再生した古民家やカモメの風見鶏など、島の景観を生かした22作品があちこちに展示されている。01年に年間4万人だった観光客は、昨年10万人を突破。地図を持って島を巡るスタンプラリーを来年3月まで開催。

 《佐久島へのアクセス》 名鉄西尾駅からバスで30分、一色漁港から高速船が一日7、8便運航。


ぶらり発見

黒壁集落

 西港渡船場近くの黒壁集落写真=は「三河湾の黒真珠」と称され、住民グループ「島を美しくつくる会」が中心となり、保全に努めている。防風のために細い路地を配し、まるで迷路のようだ。

 集落の北にある滞在型農園クラインガルテンには、バーベキュー場を併設。天然カキなどの海の幸を味わえる。

 都市部から移住した若者が営むカフェも話題だ。西地区の百一では西尾市産の抹茶を使ったラテ、東港近くのじょえるではオオアサリのパスタが人気。移動は徒歩かレンタサイクルで。問い合わせは佐久島振興課(0563・72・9607)。

(2016年9月27日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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