読んでたのしい、当たってうれしい。

アートリップ

テクノコスモス
 逢坂卓郎、田中常雅作(東京都大田区)

職人の技術が輝く小宇宙

テクノコスモス 逢坂卓郎、田中常雅作(東京都大田区)
各階から、一つ一つの部品を間近に眺めることができる=池永牧子撮影

 JR蒲田駅に隣接する大田区役所には、知る人ぞ知る吹き抜け空間がある。3~11階の高さ約30メートル。上層階からのぞき込むと、ぴんと張ったワイヤに、銀色の様々な物体が。よく見るとそれは、工業部品だ。

 大田区は京浜工業地帯の一角で、3千軒以上の工場が集まる。本作は、そんな区の産業のシンボルに、と地域の芸術振興に取り組むNPO法人の田中常雅理事長(68)らが発案。1998年、庁舎が現在地に移転したのを機に設置された。

 50本のワイヤに連なるのは、103品目836個の部品。スプリングや自動車部品、ロケットの先端部など、ほとんどが区内で製造されたものだ。区内に羽田空港がある縁から、飛行機のプロペラなども。制作を監修した美術家の逢坂卓郎さん(71)と田中さんが、工場を訪ね歩いて譲り受けた。

 うねる空調ダクト、らせんを描く細いパイプ。職人たちに話を聞き、その技術を知るほどに、造形的な面白さに引きつけられたという。「職人の技術が輝く星のよう。それらが集まった小宇宙をイメージした」。光や宇宙をテーマに制作する逢坂さんにとって珍しい作品で、「この地、この場だからこその挑戦」と振り返る。

 区役所から出て、足を延ばした。アーケード街を抜け、住宅地の中に町工場が点在する地区へ。少し開いた扉越しに、機械と向き合う大きな背中が見えた。

(木谷恵吏)

 大田区の工業

 機械部品や金属工業を中心に、従業員9人以下の工場が約8割を占める町工場の集積地。昭和50年代のピーク時は、工場数が9千軒を超えた。


ぶらり発見

 大田区にある銭湯は39軒で、都内区市町村で最多。中でも、黒湯と呼ばれる黒褐色の天然温泉が知られる。区役所から徒歩12分、改正湯(問い合わせは03・3731・7078)は黒湯炭酸泉のほか、金魚やコイなどの水槽を眺めながら入浴を楽しめる。中学生以上460円ほか。午後3時~翌午前0時半。(金)休み。

羽根付き餃子 ご当地名物といえば、羽根付き餃子。区内外に11店舗を展開する你好は、香ばしい「羽根」と、もっちりとした皮が特徴=写真。区役所から徒歩8分の本店(問い合わせは3735・6799)では焼き餃子が10個で540円。午前11時半~午後10時。不定休。

(2019年5月14日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

今、あなたにオススメ

アートリップの新着記事

新着コラム