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アートリップ

サニーヒルズ南青山店
 隈研吾建築都市設計事務所 作(東京都港区)

木組みのパイナップル!?

明かりがともった建物は、灯籠(とうろう)のように薄暗闇に浮かび上がっていた=相場郁朗撮影
明かりがともった建物は、灯籠(とうろう)のように薄暗闇に浮かび上がっていた=相場郁朗撮影

 東京・青山の裏通り。住宅街の一角に、角材の木組みがひときわ目を引く建物があった。台湾のパイナップルケーキブランド「サニーヒルズ」の日本一号店だ。2013年12月にオープンした。中に入ると、ふわっとヒノキの香りが漂い、木組みの間から木漏れ日のように光が差し込む。

 設計は、建築家の隈研吾さん(64)率いる設計事務所。サニーヒルズから「都会の中の森というイメージで」と依頼された。隈さんは「枝と枝が支え合うように斜めに木を組んで建てたら、パイナップルにも似たものができそうだなとひらめいた」と振り返る。

 木組みは、建具などに使われる伝統の技「地獄組み」を応用。釘や接着剤を使わずに木材の交差部をがっちりとかみ合わせている。ただの装飾ではなく、3階建ての建物の一部を支える役割も担う。工事期間1年のうち木組み部分に4カ月。岐阜県東濃地方の大工らが泊まり込みで取り組んだ。「製作図は一千ページを超えました。彼らもこんな建築に関わるのは一生に一度と話していましたね」と、サニーヒルズジャパンのゼネラルマネジャー堂園有的さん(37)。

 奇抜な外観が話題となり、今では建築ツアー客や外国人旅行者の来訪も多い。伊ミラノから来た建築家のピエトロ・カスターニャさん(48)は「私の国には木を使ったこんな複雑な建築はないね」と感心していた。

 《アクセス》表参道駅A4出口から徒歩7分。

(牧野祥)

 隈研吾 

 東大教授これまで20カ国以上で建築を設計。新国立競技場の設計にも携わる。2010年ごろから木組みを用いた建築に取り組む。今春、紫綬褒章を受章。


ぶらり発見

りんごケーキ サニーヒルズでは、昨年11月から日本限定のりんごケーキ(写真、5個入り1500円)を販売。クッキー生地に、煮詰めた青森県産の紅玉リンゴが入っている。南青山店(問い合わせは03・3408・7778)は、午前11時~午後7時。

 表参道駅A4出口から徒歩2分の南青山 清水湯(問い合わせは3401・4404)は、創業100年以上の銭湯。軟水を使用し、高濃度炭酸泉などを備える。正午~翌午前0時((土)(日)(祝)(休)は午後11時まで)。460円。(金)休み。

(2019年6月18日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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