五十三次 京三條橋
江戸・日本橋から約500キロ、東海道五十三次の終着点は京の玄関口・三条大橋。東山や八坂の塔を背景に、頭に薪をのせて売り歩く大原女、茶筅をさした竹棒をかつぐ茶筅売り、衣を頭にかぶった被衣姿の高貴な女性が行き交う。
多彩な「花」が咲き誇る展示室。その中で、明快な輪郭線とわずかな色で描かれた素朴な絵に目が留まった。「熊谷守一の庭」と題した一角。ムクゲやユリなどを描いた7点が並ぶ。
コロンとした円形をリズミカルに配した本作は、草丈50センチほどにもなるセンニチコウ(別名・千日草)だ。寄ってきたオレンジ色のチョウが画面を生き生きとさせている。
岐阜県出身の画家熊谷(1880~1977)は、東京都豊島区の家で32年から終生暮らした。晩年は自宅の庭にゴザを敷き、日がな一日寝そべって、アリなど自然の中の小さな命を観察し続けた。その温かなまなざしが、作品から伝わってくる。
本展では多くの芸術家が描いた「花」をテーマに、絵画や陶磁器など66点を公開している。