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美博ノート

色紙短冊蒔絵硯箱

「鳥語花香」昭和美術館

江戸中期

 「この硯箱の中には、春が満ちています」

 ふたの内側には川辺に咲く満開の桜。箱の下部には若松が根を張り、上を流れる川には硯に水を注ぐ水滴の舟が浮かぶ。身とふたを並べると、川の流れがつながるようになっている。
 学芸員の後藤さち子さんによれば、桜の花には金銀が使われ、幹は漆などを立体的に盛る高蒔絵の技法で作られている。硯の両脇の外せる細長い箱は、金銀をまいた梨地蒔絵が裏までびっしり施されているという。
 本作は、豪奢(ごうしゃ)な元禄文化が花開き、蒔絵技術も最高潮に達した頃の武家の婚礼道具だろうと後藤さん。「ふたの表は、色紙や短冊の中に草花や鳥のつがいなどを表現。武家の家紋をつないだ文様が散らされていますし、矢のように見えることから武家が家紋に好んだオモダカという水草もあしらわれています」
 鳥がさえずり花香ると銘打った本展。のどかな春を表す約40点のコレクションが並ぶ。

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