ぐるぐる渦を巻いているのは、アンモナイト? 実は違うんです。おもしろい形ですよね。私も初めて見たとき、こんな化石があるのかと感動したんです。
正体は歯の化石。約2億9千万年前の古生代ペルム紀前期の地層から見つかった、ギンザメの仲間とされる「ヘリコプリオン」の下あごの歯列標本です。
100年以上前につけられた名はラテン語で「らせん状ののこぎり」。歯かトゲか不明でしたが、2013年のCTスキャンした研究で、下あごの歯だろうという結論に至りました。
直径約20センチの渦に約100本の歯があります。本来は抜ける歯が残り、成長するにつれ中心に巻き込まれていき、こんな形をしていると考えられています。
よく見ると歯の縁がギザギザした鋸歯だと分かります。下あごとは対照的に、上あごには歯がありません。下あごを効率よく動かし、鋸歯がならぶ歯板でオウムガイや比較的小さな魚などを切り裂いて食べていたといわれます。この個体は推定2~3メートルと小柄なハンターだったようです。
ヘリコプリオンと同じ軟骨魚類「ベラントセア」の化石は約3億2千万年前の古生代石炭紀の地層から発掘されました。割れ目がない全身骨格です。
軟骨魚類は体の大部分が軟骨でできているため、化石で残るのは歯や石灰化した骨の一部がほとんど。ここまできれいな状態で残っているのは極めて珍しい。白い歯や肝臓と思われる部分も確認できます。
魚の死後、短期間で土砂に覆われ、地殻変動の影響を受けなかったことなど、複数の好条件が重なったからでしょう。
当館の魚類化石は、大石道夫東京大名誉教授が40年以上かけて収集したもの。レバノンなど海外で発掘されたものを中心に200点超あり、今では流通が制限されている地域の貴重な標本も。今にも泳ぎ出しそうな化石を見て、太古の海洋環境や生態に思いを巡らせてもらえるとうれしいです。
(聞き手・尾島武子)
《城西大学水田記念博物館大石化石ギャラリー》 東京都千代田区平河町2の3の20(☎03・6238・8412)。
午前11時~午後5時(土曜日は11時半~午後12時半を除く)。無料。原則日曜日、祝・休日休み。
学芸員 宮田真也 みやた・しんや 2016年から現職。早稲田大大学院博士課程修了。22年から城西大学理学部助教を兼任。専門は魚類化石の分類学。 |
城西大学水田記念博物館大石化石ギャラリー 公式サイト
https://www.josai.jp/fossil_gallery