五十三次 京三條橋
江戸・日本橋から約500キロ、東海道五十三次の終着点は京の玄関口・三条大橋。東山や八坂の塔を背景に、頭に薪をのせて売り歩く大原女、茶筅をさした竹棒をかつぐ茶筅売り、衣を頭にかぶった被衣姿の高貴な女性が行き交う。
年画には神様も度々登場する。観音開きの扉に貼る「門画」は、神を祀(まつ)り、家の守護を願うもの。桃を盗みに来る鬼を鬼門で捕らえたという伝説の武将がにらみをきかせていて、心強い。
しかしそんな庶民の祈りとは無関係のメッセージも、年画に記されている。本作には、「路(道)を大事にすれば、万民の幸福につながる」という中国語が読める。日中戦争下の1940年前後、日本の国策会社が中国人に向け発信した宣伝文句だ。
大量に刷られ、中国全土の家庭で貼られる年画は、時にプロパガンダにも利用された。「画風は伝統を踏襲しつつ、意図をすり替えた」と、年画研究を続ける愛知文教大教授の辻千春さんは話す。20世紀半ばには、社会主義国家を象徴する真っ赤な門画や、建国を担う労働者が描かれたものも現れた。