五十三次 京三條橋
江戸・日本橋から約500キロ、東海道五十三次の終着点は京の玄関口・三条大橋。東山や八坂の塔を背景に、頭に薪をのせて売り歩く大原女、茶筅をさした竹棒をかつぐ茶筅売り、衣を頭にかぶった被衣姿の高貴な女性が行き交う。
今週は「寿老人」を描いた日本画2点を紹介する。寿老人とは、中国の伝説上の人物で、長寿を授ける神ともいわれる。
橋本関雪(1883~1945)の「寿老人」(部分)=写真左=は、険しい顔つき。漢詩が添えられ、画面に緊張感が漂う。関雪は、漢学の素養と画才を持ち合わせ、京都画壇の重鎮(じゅうちん)・竹内栖鳳(せいほう)に弟子入りするも、対立して画塾を飛び出してしまう。「彼の勝ち気な性格が、寿老人の顔つきに表れているようです」と学芸員の前田明美さん。
一方、冨田渓仙(けいせん)(1879~1936)の「南極寿星図」(部分)=同右=は、優しい表情。老人に鼻先を近づけるシカも愛らしい。渓仙は京都の四条派に習い、さらに独学で文人画や古仏画などを学び、吸収した。「自由闊達(かったつ)でユニークな人柄が、本作からも垣間見えます」と前田さんは分析する。