読んでたのしい、当たってうれしい。

美博ノート

「大曽根風景」

アイチアートクロニクル 1919-2019 展
(愛知県美術館)

「大曽根風景」

 約1年半の大規模改修工事を終えた愛知県美術館。全館リニューアル記念の本展は、100年前の1919年を起点に、愛知の前衛的なアートシーンを地域のコレクションで追う。

 まず、地元の若い画家たちが既存の画壇に初めて主義主張を唱えた活動に着目する。1917年、大沢鉦一郎を中心に10~20代の画家7人によって結成された「愛美社」。発端は、中央画壇で写実表現を追究する岸田劉生が率いた「草土社」の名古屋での展覧会だった。岸田らの表現に触発された彼らは、視覚的な写実にとどまらず、物象の内にある力と輝きを模索した。

 本作は大沢が描いた100年前の大曽根の風景。素朴でありながら、細密描写された木肌には情熱が満ちる。「血の通いが感じられる」と、学芸員の副田一穂さん。

(2019年4月2日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

美博ノートの新着記事

  • 五十三次 京三條橋 江戸・日本橋から約500キロ、東海道五十三次の終着点は京の玄関口・三条大橋。東山や八坂の塔を背景に、頭に薪をのせて売り歩く大原女、茶筅をさした竹棒をかつぐ茶筅売り、衣を頭にかぶった被衣姿の高貴な女性が行き交う。

  • 五十三次 府中 日暮れて間もない時分、遊郭の入り口で、ちょうちんを持った女性と馬上の遊客が言葉をかわす。馬の尻にはひもでつるされた馬鈴。「りんりん」とリズム良く響かせながらやってきたのだろうか

  • 五十三次 大磯 女性を乗せ、海沿いの道を進む駕籠(かご)。担ぎ手たちが「ほい、ほい」と掛け声を出して進んだことから「ほい駕籠」とも呼ばれた。

  • 三菱十字号 トヨタ博物館「お蔵出し展」

新着コラム