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美博ノート

「諸国名所百景 肥前五島鯨漁の図」

クジラはアートだ!(鳥羽市立海の博物館)

1859年 鯨と海女の研究室(個人)蔵
1859年 鯨と海女の研究室(個人)蔵

 捕鯨が盛んだった長崎県の五島列島での漁の様子を、二代歌川広重が描いた本作。手前の船の先頭には、クジラにモリを打つ役割の漁師、羽刺が立っている。クジラの尾びれの向こう側にも、今まさにモリを放ったばかりの羽刺が。投げられたモリは、上空から落下するように描かれている。厚い脂肪を持つクジラに横からモリを投げても、深く突くことはできない。そこで羽刺はモリを上空へ向かって投げ、重力を利用し仕留めたという。まさに漁の山場だ。

 本作のように、クジラの浮世絵は背中や潮吹きの様子など、一部を大胆に切り取った絵柄が多い。江戸中期から、塩漬けの鯨肉は全国的に流通していたものの、大半の人は実際にクジラの姿を見ることはなかった。斬新な構図が、巨大なクジラへの想像力をかきたてたのだ。

(2019年9月10日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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