読んでたのしい、当たってうれしい。

美博ノート

「アリバロ尖底壷」

古代中南米文明展(光ミュージアム)

1430~1533年(インカ帝国時代)、同館蔵
1430~1533年(インカ帝国時代)、同館蔵

 15~16世紀にかけて、南米で栄えたインカ帝国。高度な農耕、土木技術を持ち、空中都市と呼ばれるマチュピチュのような高地でも、灌漑用水路や段々畑を活用して農業を営んでいた。

 そうした用水路から水をくんで運んだり、農作物で造った酒を保存したりしていたのが、写真のような土器。両脇の取っ手にひもをかけて背負い、とがった底部を地面に突き刺して貯蔵していたようだ。

 意匠はインカに多く見られる幾何学文様で、顔料にベンガラを用い、素焼きしている。中心の飾りはリャマがモチーフ。当時、人力で奉仕することが神への畏敬を示すと考えられ、車輪は発達せず、大型家畜は存在しなかった。資材運搬に使われた代表的な動物がリャマ。学芸員の松本庸子さんは「リャマは身近な動物で親しみがあったのでしょう。土器にも飾りをつけて楽しんだようです」と話す。

(2019年9月24日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

美博ノートの新着記事

  • クリスティーナ・オルソン 画家が毎夏を過ごした別荘近くに住んでいたクリスティーナ。

  • 自画像 スケッチブックを抱え、険しい顔つきの青年が荒野を歩いている。

  • あすか・夏 青々とした夏草の草原を、鳥の一群が渡る。

  • 青い白い鳥 岩倉壽と同年代で、高校、大学と教壇に立ちながら日本画の制作を続けた烏頭尾精(1932~)。

新着コラム