読んでたのしい、当たってうれしい。

美博ノート

「蝶たち」

ルート・ブリュック 蝶(ちょう)の軌跡(岐阜県現代陶芸美術館)

1957年 50.5x37.8x5.6cm TWRB Foundation’s Collection / EMMA ©KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2018 C2531
1957年 50.5x37.8x5.6cm TWRB Foundation’s Collection / EMMA ©KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2018 C2531

 フィンランドのセラミックアーティスト、ルート・ブリュックは教会やお気に入りの自然、母と子など身近なものをモチーフにしてきた。中でもチョウは、父がチョウ類の学者だったこともあり、親しい存在。父が亡くなった1957年には「蝶」の作品をシリーズで制作している。小皿大の作品数点を並べてつないだ「蝶たち」は、父が手がけた標本のようだ。父の研究を傍らで見ていた子どもの頃の思い出を表現したのだろうか。

 チョウの周りに判子のように丸い模様が施された作品もあり、細かな仕事が見てとれる。「羽のグラデーション、背景とチョウの色、隣り合う作品同士の色の対比とバランス……。抜群のセンスです」と学芸員の山口敦子さん。父への思いが感じられると同時に、ブリュックがその後、タイルを組み合わせた大きな作品に取りかかることを予感させる作品でもある。

(2020年7月7日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

美博ノートの新着記事

  • 三岸節子肖像 開催中の展覧会から注目作品をご紹介する「美博ノート」。今回から3回、一宮市三岸節子記念美術館で開かれている「岡田三郎助 優美な色彩・気品ある女性像」を紹介します。

  • 爆弾散華 碧南市藤井達吉現代美術館で開催中の「川端龍子展」の注目作をご紹介します。

  • 龍巻 突風に巻き上げられた海の生き物が、空から降ってくる--。

  • 草の実 「健剛なる芸術」を目指し、日本画に新風。大胆さと繊細さが光る代表作

新着コラム