上絵金彩綾棒踊(あやぼうおどり)図花瓶
山吹色から青色へ。本作品にも見られる鮮やかなグラデーションを得意としたのは明治時代に活躍した京都の窯元・九代帯山与兵衛(1856~1922)。技巧的な造形と華麗な色使いが、海外で高い評価を得た。
オーストラリア先住民の美術(アボリジナルアート)を紹介する今展。ユーカリの樹皮に天然顔料で描かれた本作の題材は、彼ら特有の物語「ドリーミング」だ。
ドリーミングとは、文字を持たない先住民が祖先から子孫へ伝える創世記であり、知恵や知識の体系でもある。人それぞれに異なり、他人のドリーミングを勝手に描くことは許されないという。
本作のモチーフはユーカリの木、鳥、ゴアナ(オオトカゲ)、ヤムイモ、狩人の精霊。これほど多くのものが描かれた絵は珍しく、狩猟の物語とみられる。
先住民のアーティストは、こうした作品を居住区に設けられた「アートセンター」で制作し、日用品購入に必要な金を受け取る。1990年代に作品収集のため現地を訪れた副館長の正村美里さんは、「彼らには裕福になるために描くという意識はなく、数も限られているため、その時に出会った作品が全てなのです」と話す。