読んでたのしい、当たってうれしい。

美博ノート

クラブチェアB3(ワシリー)

交歓するモダン 機能と装飾のポリフォニー(豊田市美術館)

マルセル・ブロイヤー 1925年<br />  縦72.4×横80×高さ72.4センチ 豊田市美術館蔵
マルセル・ブロイヤー 1925年
 縦72.4×横80×高さ72.4センチ 豊田市美術館蔵

 金属パイプとキャンバス地でできた直線的なデザイン。ドイツの造形学校バウハウスの1期生として学び、後に教官にもなったマルセル・ブロイヤー(1902~81)が20代のころに生み出した。

 自転車のハンドルをヒントにしたといわれる。家具といえば職人が作る木製が当たり前だった当時、金属を主材料に組み立て・解体が容易で大量生産に向いた画期的な椅子だった。

 これが置かれた場所の一つにフランスの建築家ロベール・マレ=ステヴァンが手がけた南仏のカジノ施設がある。「フランスのモダンデザインを牽引したマレ=ステヴァンが、最新のドイツデザインを即座に採り入れていたのが興味深い」と、学芸員の千葉真智子さん。

 ブロイヤーとバウハウスの同僚だった画家のワシリー・カンディンスキーが愛用したことから、後に「ワシリーチェア」と名付けられた。マイナーチェンジしながら現在も製造販売されている。

(2022年6月21日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

美博ノートの新着記事

  • 三岸節子肖像 開催中の展覧会から注目作品をご紹介する「美博ノート」。今回から3回、一宮市三岸節子記念美術館で開かれている「岡田三郎助 優美な色彩・気品ある女性像」を紹介します。

  • 爆弾散華 碧南市藤井達吉現代美術館で開催中の「川端龍子展」の注目作をご紹介します。

  • 龍巻 突風に巻き上げられた海の生き物が、空から降ってくる--。

  • 草の実 「健剛なる芸術」を目指し、日本画に新風。大胆さと繊細さが光る代表作

新着コラム