読んでたのしい、当たってうれしい。

美博ノート

牧野富太郎書簡

西尾市岩瀬文庫「植物への恋文(ラブレター)」

1896(明治29)年3月12日
牧野富太郎から名倉誾一郎宛て(部分) 名倉家蔵

 ぜひ、地元の植物を採集、調査してくださいーー。


 植物分類学の父・牧野富太郎(1862~1957)が手紙でエールを送った相手は、愛知県西尾市で植物研究に打ち込んだ名倉誾一郎(1860~1930)。地元研究団体を率いながら、牧野に植物標本を送って指導を受けた。


 この書簡は交流が始まった時期のものとされる。牧野が豊橋で見つけた珍しい植物の話題に始まり、故郷の土佐で採集を重ねて学んだ自らの経験を述べ、名倉にも地元・三河の植物採集を勧めている。


 採集した植物を送ってくれたら鑑定すると申し出、標本の作製方法やサイズなども細かく記している。「牧野の研究への志、丁寧な性格がうかがえる」と西尾市岩瀬文庫学芸員の上野加耶子さんは話す。


 今展では名倉宛ての書簡15点のほか標本の鑑定結果を記した書面、名倉から牧野宛ての書簡パネルも展示している。

  ※会期は2月12日まで。

(記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

美博ノートの新着記事

  • 五十三次 京三條橋 江戸・日本橋から約500キロ、東海道五十三次の終着点は京の玄関口・三条大橋。東山や八坂の塔を背景に、頭に薪をのせて売り歩く大原女、茶筅をさした竹棒をかつぐ茶筅売り、衣を頭にかぶった被衣姿の高貴な女性が行き交う。

  • 五十三次 府中 日暮れて間もない時分、遊郭の入り口で、ちょうちんを持った女性と馬上の遊客が言葉をかわす。馬の尻にはひもでつるされた馬鈴。「りんりん」とリズム良く響かせながらやってきたのだろうか

  • 五十三次 大磯 女性を乗せ、海沿いの道を進む駕籠(かご)。担ぎ手たちが「ほい、ほい」と掛け声を出して進んだことから「ほい駕籠」とも呼ばれた。

  • 三菱十字号 トヨタ博物館「お蔵出し展」

新着コラム