読んでたのしい、当たってうれしい。

美博ノート

萬年報喜

桑山美術館「新春万福 吉祥の日本画と工芸」

橋本関雪 1938(昭和13)年ごろ
縦52×横57㌢ 絹本着色 桑山美術館蔵

 老松の枝に止まっているカササギは喜びを告げる鳥。目は生き生きと輝き、開いたくちばしから吉報が聞こえてきそうだ。右下の花は不老長寿を意味するコウシンバラだろうか。


 松とカササギの組み合わせは、中国の文人画で「萬年報喜」と呼ばれる吉祥の画題だ。長寿を表す松は「萬年」、カササギは「報喜」。動植物に意味を託して描き、寓意(ぐうい)を込めたタイトルを付ける「謎語(めいご)画題」が、文人画には多くある。


 作者は大正~昭和期に京都画壇で活躍した橋本関雪(1883~1945)。儒学者の父の影響で漢学に親しみ、中国の文学や風物に取材した絵画を手がけた。昭和期に動物画へ移行した後も、精神性を重んじた作品を多く残した。


 「幼い頃から中国の古典に親しんだ教養の深さが、この作品にも表れている」と、桑山美術館学芸員の前田明美さんは説明する。

 ※会期は2月4日まで。

(記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

美博ノートの新着記事

  • 五十三次 京三條橋 江戸・日本橋から約500キロ、東海道五十三次の終着点は京の玄関口・三条大橋。東山や八坂の塔を背景に、頭に薪をのせて売り歩く大原女、茶筅をさした竹棒をかつぐ茶筅売り、衣を頭にかぶった被衣姿の高貴な女性が行き交う。

  • 五十三次 府中 日暮れて間もない時分、遊郭の入り口で、ちょうちんを持った女性と馬上の遊客が言葉をかわす。馬の尻にはひもでつるされた馬鈴。「りんりん」とリズム良く響かせながらやってきたのだろうか

  • 五十三次 大磯 女性を乗せ、海沿いの道を進む駕籠(かご)。担ぎ手たちが「ほい、ほい」と掛け声を出して進んだことから「ほい駕籠」とも呼ばれた。

  • 三菱十字号 トヨタ博物館「お蔵出し展」

新着コラム