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美博ノート

交響

名都美術館「没後50年 堂本印象とは何者か」

1961年 紙本着色 160.5×129.0センチ 京都府立堂本印象美術館蔵

  画面を飛び交う墨の線。にごりのある色彩の上に、色鮮やかな飛沫(ひ・まつ)がはじける。伝統的な日本画から抽象画へと転じた堂本印象、晩年の代表作だ。

 制作にあたり、印象はこう語ったという。「作曲家が楽譜に記号で作曲するように色彩と構図で私の交響曲を表現したい」。様々な音が響き合うような立体的な空間を生み出した。
 印象は戦後の渡欧を経て抽象表現に移行。墨の線と色彩を用いた躍動的な表現を確立し、「新造形」と名付けた。
 当時、欧州ではアンフォルメルと呼ばれる抽象表現が流行したが、「世界の動向を意識しながらも、これは独自の表現だという思いが表れている」と、学芸課長の鬼頭美奈子さん。「墨の表現には東洋人としての自負も感じる。勢いのある筆さばきは無作為ではなく、下絵を作って構図を緻密(ちみつ)に組み立てている。これまでの画業を基盤にして、至るべくして至った表現なのだろう」とみる。

 

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