私の描くグッとムービー

ヨシタケシンスケさん(絵本作家)
「ウォーリー」(2008年)

太って生き抜く人類の幸せって

 一言で言うと、壮大なブラックユーモアの塊みたいな映画に見えたんですよ。

 荒廃した未来の地球で、ひとりぼっちでゴミを片付けるロボットのウォーリー。背景に700年前、人類がゴミでいっぱいになった地球を捨てて巨大な宇宙船で脱出したことがさらっと描かれている。ある日宇宙から地球の植物が再生しているかを調査しにイヴというロボットがやって来て、ウォーリーは恋心を抱く。少年と少女が出会って恋に落ちる、典型的なストーリーのロボット版です。

 だけど僕は、描かれていない部分が気になってしまう。当時宇宙船に乗れなかった人たちは地球に残されてどうなったのか。お金持ちだけが助かったんだろうなって。ウォーリーがイヴを追って乗り込んだ宇宙船内で生き延びていた人類についても深読みしてしまう。移動も食事も機械に支配されたサービスを受けて楽しそうだけど、ぶくぶく太って転んだら自分の力で起き上がることもできない。この人たちの幸せってなんなんだろう、と。イラストは「ウォーリー」を映画館で見ている現代の人々を。今の社会も似たようなものかもしれませんよね。

 可愛らしいロボットと、人類へのグロテスクな風刺で、子どもも大人も満足させるプロ意識にほれぼれする。善意か悪意か分からないラストには混乱もするけど、人間だっていい人か悪い人か分からない方が魅力的じゃないですか。僕の絵本もそう受け取ってもらえると一番うれしいんです。

聞き手・井上優子

 

  監督・共同脚本=アンドリュー・スタントン
  製作=米
  声の出演=ベン・バート、エリッサ・ナイトほか
 ヨシタケさんを特集する絵本雑誌「MOE」12月号、新作絵本「それしか ないわけ ないでしょう」が発売中(いずれも白泉社)。

 


ヨシタケシンスケさんの直筆イラスト入り色紙プレゼント!

 

ヨシタケシンスケさんの直筆イラスト入り色紙

 ヨシタケシンスケさんが「私の描くグッとムービー」で語った映画「ウォーリー」をモチーフにイラストを描いた色紙を3人にプレゼント。
 応募は下の応募ボタンを押した後、クイズの正解を選んでください。ヒントは、朝日マリオン・コムのコラム「私の描くグッとムービー」の紹介記事中にあります。

→ 応募はこちら
【応募締切 2018年11月30日16時】

 

(2018年11月9日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

広告
「私の描くグッとムービー」の新着記事 一覧を見る
シャンプーハット こいでさん(芸人) 「レナードの朝」(1990年)

シャンプーハット こいでさん(芸人)
「レナードの朝」(1990年)

この物語は、脳神経科医オリバー・サックスの回想録が基になっています。

望月通陽さん(染色家)「大魔神」(1966年)

望月通陽さん(染色家)
「大魔神」(1966年)

悪人を見すえる充血した目。すべてを破壊する大きな手。大魔神の圧倒的な力に出合ったのは、染物屋から独立した24歳の頃でした。

板垣巴留さん(漫画家)「メッセージ」(2016年)

板垣巴留さん(漫画家)
「メッセージ」(2016年)

エイリアンとのコミュニケーションを淡々と描いた異色のSFです。SFというより、一人の女性の感動的な生き様を見た気分になりました。

石川真澄さん(画家・絵師)「時計じかけのオレンジ」(1971年)

石川真澄さん(画家・絵師)
「時計じかけのオレンジ」(1971年)

近未来のロンドンが舞台。悪事の限りを尽くす少年グループのリーダー、アレックスは、仲間割れにより殺人罪で投獄される。刑期短縮のため、人格を矯正する心理療法を受けるが……という物語。

新着コラム 一覧を見る
「銀座 立田野」の立田野あんみつ

オトコの別腹

木場勝己さん
「銀座 立田野」の立田野あんみつ

子どもの頃、祖母が火鉢であんこを煮てくれました。それをお汁粉にしたり、おはぎにしたりと、あんこは家で食べる物だったんです。

「スパ吉」の明太子(めんたいこ)とウニとイカのバター風味

おんなのイケ麺(めん)

花澤香菜さん
「スパ吉」の明太子(めんたいこ)とウニとイカのバター風味

学生の頃はお仕事と学業の両立で、頑張った日は「自分にご褒美」って、スパ吉に行っていました。本当においしいんです。

タブレット純の「昭和歌謡に恋した私」

タブレット純の「昭和歌謡に恋した私」

<上> ムード歌謡・ロシア民謡編

歌手でお笑い芸人のタブレット純さんが、自身のエピソードを交えながら昭和歌謡の魅力を紹介します。

西村千太郎「納屋橋風景」

美博ノート

西村千太郎「納屋橋風景」

名古屋市美術館は、地元を中心に東海地方にゆかりのある作家の作品も収集している。本作は、同市出身の洋画家・西村千太郎(1907~94)の風景画。

♪プレゼント♪

マイページへ 新規会員登録

プレゼント応募時に1度会員登録をされると、以後はパスワードなどの入力だけでご応募いただけます。