かずのこさん(イラストレーター)
「ワンダー 君は太陽」(2017年) 物語の中に、そっと手を差し伸べるような静かな優しさがあふれていて、落ち込むと見ています。
「ワンダー 君は太陽」(2017年) 物語の中に、そっと手を差し伸べるような静かな優しさがあふれていて、落ち込むと見ています。
初めての海外は、欧州への貧乏旅行でした。当時、僕はアートへの情熱が抑えきれず、鳥取大学工学部を中退。東京の専門学校で版画をイチから学んでいましたが、若さゆえの焦りがありました。とにかく歴史ある地の芸術や文化に触れたくて、フランスやイタリアなどを巡ろうと、夏休みに取るものも取りあえず旅立ったのです。
オーストリア・ザルツブルクは、このミュージカル作品の舞台です。主人公マリア(ジュリー・アンドリュース)が過ごした修道院が残っていました。陰影の深い、これはスケッチせねば、と感じさせる建造物でした。
マリアは妻を亡くして7人の子を育てるトラップ大佐(クリストファー・プラマー)の家の家庭教師になります。ナチス台頭の危機のなか、マリアらは力を合わせて生きてゆきます。緑豊かな風景や「ドレミの歌」「エーデルワイス」を思い浮かべる人も多いでしょう。「私のお気に入り」は雷を怖がる子どもたちをマリアが励ます歌でした。後にジャズの巨匠ジョン・コルトレーンの名演で知られるようになります。
僕は東京のデザイン会社で修業後、鳥取に帰郷。デザイン事務所を営む一方、自分なりの表現を追求してきました。ジャズの天衣無縫なスタイルにほれ、ジャズミュージシャン像を鉄筋などで表現する「鉄筋彫刻」という手法を編み出し、かれこれ33年間、打ち込んでいます。
探究心の原点は、欧州に飛び出した旅にあります。あの旅路とつながる「サウンド・オブ・ミュージック」の世界、そして「私のお気に入り」の染みいるような響きは、今も僕を鼓舞しつづけています。
(聞き手・木元健二)
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監督=ロバート・ワイズ
製作国=米国 出演=ジュリー・アンドリュース、クリストファー・プラマーほか
とくもち・こういちろう 1957年生まれ。「鉄筋彫刻」のほか銅版画にも取り組む。日野皓正らジャズミュージシャンをはじめ、浮世絵の世界も描く。
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