私の描くグッとムービー

上出惠悟さん(九谷焼作家)
「パターソン」(2016年)

生活の中で詩作するバス運転手

 舞台は米ニュージャージー州の街、パターソン。地名と同じ名前の主人公パターソンは、バスの運転手をしながら、素敵な奥さんや犬と暮らしている。毎朝ほぼ同じ時間に起きて仕事に行き、家に帰って奥さんと話し、夜は犬の散歩がてら行きつけのバーに寄る。そんな毎日の繰り返しの中で彼は詩を書いています。

 パターソンは奥さんから「詩を世に出すべきだ」と言われる。でも本人は「詩人として活躍したい」という気持ちよりも、あくまで「バスの運転手」として仕事に誇りを持ちながら、生活の中で生まれてくる言葉や思いを詩にすることの方が大事みたい。

 僕は窯元の家に生まれて、家業を継ぐと決めたけど、周りから等身大の自分より大きく捉えられたり、自分でも欲が出て背伸びしてしまったり……。着物を何枚も着込んでしまったようで、最近は少し重いなと感じることがあったから、パターソンが日々の営みの中で純粋に芸術を紡ぐ姿にグッときたのかも。

 パターソンのように毎日働いて、自然に営みを続ける人々の姿は美しく尊い。自分も美しい風景の一部でありたいと思う。犬と散歩したり、妻と過ごしたり、そんな時間を大事にしながら「茶わん屋」として何かを残していけたらいいな。

 映画の中で印象的なのが、彼の詩の題材になった青いマッチ。僕の絵でもマッチを並べて映画に出てくる重要なシーンを表現してみました。皆さん、これは何に見えますか?

聞き手・笹木菜々子

 

  監督・脚本=ジム・ジャームッシュ
  製作=仏・独・米
  出演=アダム・ドライバー、ゴルシフテ・ファラハニ、永瀬正敏ほか
かみで・けいご
 1981年生まれ。九谷焼窯元・上出長右衛門窯の6代目にあたる。5月2日~5日、石川県能美市の窯元の駐車場で「窯まつり」を開催。

(2019年2月8日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

「私の描くグッとムービー」の新着記事 一覧を見る

佐藤穂波さん(イラストレーター)
「ヘアスプレー」(2007年)

高校生の頃、有志でダンスを披露する文化祭の企画がありました。この映画に出てくる曲で踊ることになり、みんなで映画を見たのが最初です。

よしながこうたく さん(絵本作家) 「タイタンの戦い」(1981年) 

よしながこうたく さん(絵本作家)
「タイタンの戦い」(1981年) 

ギリシャ神話の最高神ゼウスと人間の姫ダナエの間に生まれた半神半人のペルセウスが主人公の冒険物語。

柳幸典さん(現代美術家)「冒険者たち」(1967年)

柳幸典さん(現代美術家)
「冒険者たち」(1967年)

「命を賭けて挑戦しなければ何物をも得ない」。少年の頃に見て、そんな感慨を持った映画です。

谷口智則さん(絵本作家)「ブリキの太鼓」(1979年)

谷口智則さん(絵本作家)
「ブリキの太鼓」(1979年)

原作は、ドイツの作家ギュンター・グラスの代表作。ダンチヒ(現ポーランド・グダニスク)を舞台に、自ら3歳で成長を止めてしまった主人公オスカルの目線を通し、ナチス台頭から敗戦の混乱期にひずむ社会や人間模様、生と死、愛などが生々しく描かれています。

新着コラム 一覧を見る
ブームの卵

ブームの卵

6月21日 注目グッズ
「撮れる傘 instabrella」など

旅先やアウトドアで自撮り棒があると便利だけど、梅雨の時期は傘も持ち歩きたいし、荷物が増えちゃう……。

「讃岐うどん 根の津」のちく玉天うどん

おんなのイケ麺(めん)

東直子さん
「讃岐うどん 根の津」のちく玉天うどん

森鴎外記念館(東京都文京区)に何度かイベントに伺っていて、昔ながらのお店と新しいお店が両方あるこの町の雰囲気が楽しくて、去年の4月、仕事場を移しました。

「菓房処(どころ) 京家」かりんとう饅頭(まんじゅう) 鬼の金棒

オトコの別腹

寺田真二郎さん
「菓房処(どころ) 京家」かりんとう饅頭(まんじゅう) 鬼の金棒

これは都内の表参道にある新潟のアンテナショップで見つけました。もともと、道の駅や物産展、アンテナショップへ行くことが趣味なんです。

浄瑠璃人形「お里」

美博ノート

浄瑠璃人形「お里」

中部地方などの祭礼や人形浄瑠璃で使うからくり人形の制作、修復を行う木偶師・二代目萬屋仁兵衛。

マイページへ 新規会員登録

プレゼント応募時に1度会員登録をされると、以後はパスワードなどの入力だけでご応募いただけます。