舞台は1962年のアメリカ。黒人で天才ピアニストのシャーリーは、イタリア系白人で高級クラブの用心棒トニーを運転手に雇い、あえて、人種差別のひどい南部へとコンサートツアーに出る。実話を元にした物語です。
いかにも「上流階級!」って感じのシャーリーは、差別を受けても品位を保つことで、屈しない強さを持ってる。「めっちゃスラング!」みたいなトニーは、ハッタリと勢いでトラブルを回避したり、家族を守ったりする。性格も正反対の2人の全然かみ合っていない掛け合いのリズム感が面白い。アメリカという国で、黒人やイタリア系といった人種の立場から見ると、差別の受け止め方にも違いがあった。本来は交わらなかったはずの2人が、生涯をかけた友達になっていくストーリーがとにかく好き。違いを認めていく成長の仕方が好きなのかもしれない。
CHAIも音楽活動で世界を回っていると、日本と海外は違うなと思える。日本は「仕事は正確に」というしっかりした感じ。海外は、ライブ中のハプニングやトラブルでさえ「生でいいね」っていう感覚。どっちのスタイルもいい。色んなパターンが分かれば応用力がつくし、「ここまでいける」みたいなラインが広がる。違うことは面白いって知ったら、新しい見方ができるよね。
トニーの妻がシャーリーをハグして「ありがとう」って言う最後の場面がとっても良い。2人は初対面のはずなのに、トニーという点を通じて心がつながってた。1個、ちょんって点を打つと波みたいに広がるんだなって。
(聞き手・伊東哉子)
監督=ピーター・ファレリー
製作=米 出演=ビゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ、リンダ・カーデリーニほか
CHAI・ユウキ 4人組女性バンド「CHAI」のベース担当。作詞やアートワークも手掛ける。7月6日に「HERO JOURNEY feat.Superorganism」をリリース。
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(2022年7月22日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)