小学生の時から「他人に幸せが広がって連鎖することで、自分も幸せになれる」という言葉が意識の中に存在していました。だからタイトルの「次へ渡せ」「次に繫ぐ」という意味のメッセージを見た時、自分の考えと似ていると興味が湧いたんです。

　11歳の少年トレバーは、社会の授業で出された「世界を変える方法を考え実行してみよう」という課題に、「他人を3人助け、助けた人にそれぞれ別の3人を助けてもらう」という案を考えます。

　見返りを前提としない考え方を作品にしたところが好きです。人って、いいことをしたらその分返してくれるよねって、どっかで望む生き物だと思うんですよ。だけど、次へ渡すことはただの善意であり、普通の日々の行いなんだよってことを、もっとみんなで共有できたら、とてもいい心の循環が起きるのになと思います。

　物語の中でも特に印象的だったのは、「“次へ渡す”のは失敗だ」と落ち込むトレバーにシモネット先生が話しかけるシーンです。子供が真剣に考えて行動を起こしているひたむきさも美しいし、先生自身が“次へ渡す”側なのに動けていない理由も、今社会で起きてしまっている現象を巻き込みながら描かれていて、すごく現実味を感じます。

　描いた絵の中には、バンビやコアラなどいろんな生き物がすんでいます。地球上だけでなく地球外まで様々な生命が、親愛なる他者のために（for　dearest）互いに手を取り合って受け渡し合おうよ、という思いを込めました。

　以前は、アイドルとしてキラキラした見せ方をしなくてはいけないと思っていましたが、病気を経験し、つらい時期を越えて、そのままの生き様を見せて好きになってもらえばいいと考えが変わりました。今はそんな僕を好きだと思ってくれるファンの皆さんが増えてきていると感じます。ちょっとずつでも、新たなアイドル像を次へと渡し続けていきたいですね。

（聞き手・中山幸穂）

監督＝ミミ・レダー　　　 　制作国＝米 　出演＝ハーレイ・ジョエル・オスメント、ケビン・スペイシーほか   　やすだ・しょうた　1984年生まれ、兵庫県出身。アイドルグループSUPER　EIGHTのメンバー。11日にロサンゼルスで撮り下ろした等身大の姿を収める写真集「DOWN　TO　EARTH」（講談社）を発売。 　写真集「DOWN　TO　EARTH」：https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000416798