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私の描くグッとムービー

シロイさん(鉛筆彫刻人)
「シン・ウルトラマン」(2022年)

チームのために 踏み出す勇気くれた

 おいっ子がハマったことがきっかけで、またウルトラマンを見るようになりました。そんな時、ちょうど公開されたのがこの作品。映画館で2回見ましたね。

 舞台は、巨大不明生物「禍威獣(かいじゅう)」があらわれるようになった日本。政府が設立した「禍威獣特設対策室専従班」(通称:禍特対)の一員、神永は浅見とコンビを組むことになりますが、単独行動ばかり。浅見から「世の中は個人だけで構成されているわけではない」と諭されます。

 当時、鉛筆彫刻をSNSに上げるようになったら少しずつ見てもらえるようになって、初めての個展を富山で開くことが決まった時期でした。神永の姿が、個展のために初めてチームを組んで動くことになった自分と重なりましたね。

 映画の最終局面で、「仲間との話し合いを優先したい」と、上層部の指示を押しのけるシーンは神永の成長やチームへの信頼が感じられて印象的でした。触発されて、自分も運営チームのために何かしたいと思ったんです。顕微鏡にカメラをつけて削っている手元の映像をお客様に見てもらう実演を、当初は個展の初日と最終日にだけ実施する予定でした。でも、チームを盛り上げたいと思って、もう1日実演日を追加したんです。盛り上がりましたね。それ以降、展示会などの前には、初心を思い出すため、踏み出す勇気をくれたこの映画を見返すようにしています。

 写真の鉛筆彫刻は、ウルトラマンがビルを突き破って出てくる象徴的なポーズ。サイズは約14ミリ。右手を突き上げる様子を再現するためには幅が必要なので通常サイズよりも芯が太い鉛筆を使って、7~8時間かかりました。

(聞き手・中山幸穂)

 

  
   監督=樋口真嗣 企画・脚本=庵野秀明   

   出演=斎藤工、長澤まさみ、西島秀俊、有岡大貴、早見あかり、田中哲司ほか

 

 1987年生まれ、新潟県出身。美術は苦手だったが、テレビで見た鉛筆彫刻に衝撃を受け制作をスタート。SNSを通じて作品を発表している。

 HP:https://pencilshiroi.jimdofree.com/

 X:https://x.com/shiroi003

 
(2025年12月5日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます)

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