読んでたのしい、当たってうれしい。

逢坂剛さん
ステーキ&ワイン 神房  ビーフカレー

 神田神保町とともに育ちました。小学生の頃から挿絵画家の父・中一弥の資料探しについていって親しんだ、本の街。近くにあった中央大学と博報堂と、学生・会社員時代を通じて日々、足を運んだものでした。専業作家になって仕事場を構え、30年ほどになります。

 この界隈には気の利いた一皿を出す料理店がたくさんあります。「カレーの街」としても知られ、僕は週2回はお昼にカレーをいただいています。

 大好きな野球に例えれば4番打者なのが、「神房」かな。ハンバーグなんかもおいしいですが、カレーの老舗「ボンディ」神保町本店の姉妹店で、決まってビーフカレーを注文します。添えられたポテトがまたいい。辛みの後、ほくほくの食感がひろがってきます。

 店によると、塊肉を煮込み、ごろんとした大きさに切り分ける。何時間煮るかは企業秘密らしいですが、肉のエキスで味が深くなったブイヨンはカレーの味にいかされるとか。

 もうすぐ83歳になりますが、おかげ様で今も稼働しています。大事なのが長年のリズムを変えないこと。ラッシュアワーの電車で通勤し、古書店で出物を探り、また机に向かう。さっと食べられて、うまいカレーは、欠かせない僕の燃料なのです。

(聞き手・木元健二)

 

  ◆東京都千代田区神田神保町2の3(☎03・3264・8320)。ビーフカレー、チキンカレー(いずれも1800円)。カレーメニューはランチタイムのみ。午前11時~午後3時、5時半~9時半(祝はランチのみ)。日休み。

 


 

 おうさか・ごう 作家。1943年生まれ。広告会社・博報堂に勤めていた80年にデビュー。87年「カディスの赤い星」で直木賞。97年から専業作家に。ドラマや映画化された「百舌」シリーズ、「イベリア」シリーズなどのほか、時代小説にも定評がある。
 
(2026年8月6日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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