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高野山霊宝館

経文納めたミニ五輪塔 各地から

高野山霊宝館
高野山奉納小型木製五輪塔(左が正面) 江戸時代後期 高さ9センチ 国登録有形民俗文化財 円通寺蔵
高野山霊宝館 高野山霊宝館

 当館は弘法大師・空海が816年、密教の修行の地として開山した高野山内にあり、国宝21件を含む約10万点の文化財を保存・展示しています。1月15日までの企画展「仏を護る入れ物 納める・容れる・包む」では文化財の中身や入れ物にも着目して併せて展示、秘められた価値を紹介しています。

 「高野山奉納小型木製五輪塔」は2019年、山内の円通寺の須弥壇(仏をまつる祭壇)の下から見つかりました。15個の木箱の中に計1万2156点。一木造りで正面には上から空、風、火、水、地を表す梵字が墨書されています。底に丸い穴があり、木せんでふさいでありました。中にあった小さくたたまれた紙には短い経文が記されていました。

 高野山には平安時代末期以来、来世での平安を願って死者の遺骨や歯を納める納骨信仰があり、弘法大師御廟のある奥之院地区には数多くの石製の五輪塔や供養塔が立ち並びます。木製五輪塔もこうした信仰の表れで、経文は遺骨の代わりと考えられます。

 ほとんどの塔の底には施主名、供養する対象者の名、居住地として北は新潟県の佐渡島から南は徳島県までの地名が墨書されています。高野山が広範囲にわたり、幅広く信仰を集めていたことがわかります。

 仏像の内部に重要な情報や文書が隠されていることもあります。「執金剛神立像」は11年、当館で展示中に突然倒れて破損。この機に内部の空洞をファイバースコープで調査したところ、鎌倉時代を代表する仏師・快慶の作であることを示す墨書銘が見つかりました。さらに内部に納められた経典の記述から、奈良・東大寺を復興した重源上人に従う仏師らが像の建立に際して納経したこともわかりました。


(聞き手・栗原琴江)


 《高野山霊宝館》 和歌山県高野町高野山306(問い合わせは0736・56・2029)。午前8時半~午後5時(5月~10月は5時半まで。入館は30分前まで)。1300円。28日~1月4日休み。

とば せいごう

学芸員 鳥羽正剛

 とば・せいごう 僧侶として2005年から金剛峯寺勤務。大阪市文化財協会、高野町教育委員会(世界遺産文化財専門員)出向などを経て13年から現職。仏教考古学が専門。

高野山霊宝館公式HP
https://www.reihokan.or.jp/

(2022年12月20日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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