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久能山東照宮博物館

徳川歴代将軍名宝展

「金陀美具足」 16~17世紀 胴高39、兜鉢(かぶとばち)高18.5センチ 重要文化財
「金陀美具足」 16~17世紀 胴高39、兜鉢(かぶとばち)高18.5センチ 重要文化財
「金陀美具足」 16~17世紀 胴高39、兜鉢(かぶとばち)高18.5センチ 重要文化財 「歯朶具足」 16世紀 胴高36.5、兜鉢高19センチ 重要文化財

 駿河湾に面した山上に徳川家康をまつるため創建された久能山東照宮。境内にある当館は家康が使った机やうちわ、眼鏡などの日用品、徳川歴代将軍の武器・武具などを所蔵しています。中でも甲冑は63領あり、家康から15代慶喜まで全将軍のものがそろいます。

 「金陀美具足(きんだみぐそく)」は3領ある家康の甲冑の一つで、放映中の大河ドラマでおなじみですね。ヘルメットのようにつるんとしたかぶとをはじめ装飾がほとんどないのが特徴。約12㌔と比較的軽く、実戦向きといえます。

 1560年、数えで19歳の家康が桶狭間の戦いで大高城(現在の名古屋市)に兵糧を運び入れた際に着用したとされます。

 今川義元のもとで人質生活を送っていた家康が、戦場で目を引く金色の甲冑を身に着けることで、武功を立てる姿をアピールし、出世したいと考えたのかもしれません。血気盛んな姿が浮かんできます。

 「歯朶(しだ)具足」は、「天下分け目」の関ケ原の戦い(1600年)と、豊臣方を滅ぼした大坂の陣(1614、15年)で用いたとされます。

 かぶとは大黒天の頭巾をイメージした形。よろいには鉄媒染による貴重な黒糸が使われ、総大将としての風格が漂います。本作は徳川の家運を開いた吉祥の象徴とされ、4~14代の各将軍は模造品を仕立てたそうです。

 ちなみに残る1領は、「金陀美具足」の着替えとされる「白檀塗(びゃくだんぬり)具足」。これらの具足を比べると、青年期と晩年で体格や立場の違いが見てとれ、家康の人生に思いをはせることができます。

(聞き手・木谷恵吏)


 《久能山東照宮博物館》 静岡市駿河区根古屋390(問い合わせは054・237・2437)。午前9時~午後5時(入場は15分前まで)。400円。「金陀美具足」は11月26日まで「徳川歴代将軍名宝展」で展示中。「歯朶具足」は11月3日~12月13日、静岡市美術館の企画展で展示予定。

  久能山東照宮博物館
  https://www.toshogu.or.jp/kt_museum/

とつか・なおふみ

学芸課長 戸塚 直史

 とつか・なおふみ 静岡県出身。国学院大学神道文化学部卒。2014年から久能山東照宮の権禰宜兼学芸員として勤務。

(2023年9月19日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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