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【相続会議】「相続人がいないと国にとられる?」 “おひとり様”が死後に財産を託すには ~相続税お悩み相談室~

 税理士が相続税の悩みにお答えします

理士の森田貴子さんが相続税にまつわる様々なお悩みにお答えします。今回の相談者は血縁者が一人もおらず、死後に自分の財産を信頼できる人に相続できるか悩んでいます。

(この記事は、相続ポータルサイト「相続会議」 からの転載です)
 

独身で子どももおらず、兄弟姉妹もすでに他界するなど相続人がいない状態です。自分の死後に財産は国にとられてしまうのでしょうか。信頼できる団体や人に財産を残したいと考えています。手続きや税金はどうなるのでしょうか。(千葉県在住 60歳女性)

 

独身で子どももおらず、兄弟姉妹とも疎遠で親戚付き合いも途絶えている。そのような方からよく受ける相談が、長年働いて築いた資産や思い入れのある家、預貯金などが自分の死後どうなるのか、ということです。

 

「信頼できる人や団体に託したいけれど、どうすればいいのか分からない」と悩む方は少なくありません。相続人がいない場合の財産の行方、そして希望通りの遺贈や寄付を実現するための具体的な方法を、税理士がわかりやすく解説します。

 

前提として、相談者のように独身で血縁者がいない方の財産は、最終的には国庫に納めることになります。したがって、財産を譲りたい人がいるときはしっかりと遺言書を作成して遺贈という手続きをしましょう。

 

配偶者や子どものいない単身高齢者は増加傾向にありますので、相談者と同様のお悩みをお持ちになる方は、今後増えていくでしょう。

  

相続人が見つからないときは家裁が「相続財産管理人」を選任

亡くなった人(被相続人)に親族と思われるような人が見当たらず、遺言書も残していない場合には、被相続人が最後に住んでいた地域を管轄する家庭裁判所が「相続財産管理人」を選定して、その財産を受け取る相続人を探します。

 

相続財産管理人は、あなたの財産を管理し、借金その他の債務の整理や遺品の処分などを行う専門家(多くは弁護士)です。

  

特別な関係があれば「特別縁故者」として財産が渡るケースもある

被相続人と生計を一にしていたり、長年介護をしてくれたりした人や生前に特に親しくしていた人がいれば、「特別縁故者」として財産の一部または全部を受け取れる可能性があります。

 

ただし、これは相続財産管理人が管理している間に、家庭裁判所に申し出た上で審理を経る必要があります。また、申し出たとしても必ず認められるわけではありません。

  

最終的には「国庫」に帰属する

相続人だけでなく特別縁故者も1人もいない場合もあるでしょう。その場合は、清算後の相続財産はすべて国庫に納められることになります。

 

2023年度には、相続人が不在で国庫に入った財産が1015億円となったことが新聞でも公表されていました。最高裁によると、相続人不存在によって国庫に帰属した財産収入は23年度に1015億5027万円。22年度の768億9444万円から32%も増えています。

 

自分の財産はすべて国のために使ってほしいと考えている場合は問題ありませんが、お世話になった人に財産を譲りたいという場合は遺贈、つまり遺言書で財産を譲ることを検討してください。遺贈では財産全額ではなく、一部を遺贈することもできます。

  

財産を想いある誰かに託すには「遺言書」が必須

「できれば信頼できる人や団体に自分の財産を残したい」と考えるなら、あなたの想いを法律で形にする手段が「遺言」です。遺言書を作成することで、以下のような財産の引き継ぎが可能になります。

 

・長年お世話になった知人や介護者への遺贈

・支援したいNPO法人・公益法人への寄付

・ペットの世話をしてくれる団体への支援

 

特に、法人への遺贈や寄付は社会的意義の高い選択肢として注目されています。

 

遺贈は、遺言書によって与える財産を指定したり、割合を指定したりするものです。一度遺言書を作成したとしても、その後に気持ちや考えが変わったときは遺言書を新たに作成することで内容を何度でも変更できます。遺贈するのに受け取る人の同意は必要ありません。

 

また、遺贈寄付といって、公益財団法人「日本財団」や「日本盲導犬協会」、「国連児童基金」(ユニセフ)、「日本赤十字社」など公益法人やNPO法人、学校法人やその他の団体や機関などに、遺言書によって自分の財産の一部または全部を寄付することもできます。遺贈寄付をサポートする専用窓口のある団体もありますので、興味があれば問い合わせをするのもいいでしょう。

 

そのような団体や機関に対する遺言による寄付は原則、相続税の対象にはなりません。

 

財産を安心して「託す」ためには、信頼できる専門家の助言を受けることが有効です。税理士であれば以下のような場面で相談者の希望の実現をサポートできます。

 

・遺言作成時の財産評価(不動産・株式・預貯金など)

・遺贈・寄付に伴う税金の試算とアドバイス

・相続税の申告(受遺者側含む)

・寄付先選定のサポート(税制優遇の有無など)

・信託や財団法人の設立支援

 

法的には弁護士、公証人、司法書士との連携も必要なため、税理士が窓口となってワンストップでチームを組むケースも増えています。

 

相続人がいないからといって、「何もしなくてもいい」ということはありません。むしろ、あなたが想いを託したい人や団体があるなら、元気なうちにしっかりと備えておくことが大切です。

 

「この人に託してよかった」と思えるような財産の使い方は、人生の最期をあたたかなものにしてくれるはずです。ぜひ一度、信頼できる専門家と一緒に、あなたの人生の「しまい方」について話し合ってみてください。

 

(記事は2025年10月1日時点の情報に基づいています。質問は実際の相談内容をもとに再構成しています)

  

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