読んでたのしい、当たってうれしい。

街の十八番

セキネ洋傘店@前橋

年間300本 思い出を日傘に

店内奥でミシンをかける関根さん。修理や名前入れも行う
店内奥でミシンをかける関根さん。修理や名前入れも行う
店内奥でミシンをかける関根さん。修理や名前入れも行う 着物をほどいて作る日傘は注文のみで、6480円から。着物用の雨コートの生地で雨傘も作れる

 前橋の中心商店街の一つ「弁天通り商店街」。明治中頃から通りに店が並び、昭和40年代は最もにぎわった。160メートルのアーケードには洋品店や金物店などが25店舗。セキネ洋傘店は、1904(明治37)年創業。仕入れ品の販売だけでなく、手作りの傘の注文も受ける洋傘専門店だ。

 店内には、300円のビニール傘から2万5千円の高級な日傘まで、日本製を中心に600本近くがそろう。

 ミシンをかける父親の姿を見て育ったという、4代目の関根健一さん(74)は、20歳からこの仕事を始めた。

 三角形に切った8枚の布を傘用ミシンで縫い合わせ、骨を通す。丈夫な着物の「耳」を傘の縁に使うため、裁断や柄の取り方を工夫する。

 17年前から持ち込みの着物や反物で日傘を仕立て始めた。思い出の品が生まれ変わると口コミで広まり、今では多い時に年間300本程の注文が全国からある。

 「お客さんの喜ぶ声を聞いてやめられなくなりました。技術は伝えていきたい」。後継者を探しているという。

(文・写真 秦れんな)


 ◆前橋市千代田町3の3の25(問い合わせは027・231・6094)。午前9時半~午後6時半。水曜定休。前橋駅からバス。

(2017年6月16日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

街の十八番の新着記事

  • 水戸元祖 天狗納豆@水戸 茨城といえば納豆というイメージをつくったのが水戸の「天狗(てんぐ)納豆」。

  • 大和屋@日本橋 東京・日本橋、三越前に店を構えるかつお節専門店。江戸末期、新潟出身の初代が、魚河岸のあった日本橋で商いを始めた。

  • 佐野造船所@東京・潮見 水都・江戸で物流を担ったのは木造船だった。かつて、和船をつくっていた船大工は今はほとんど姿を消した。佐野造船所は、船大工の職人技を代々受け継ぎながら生き延びてきた。

  • 天真正伝香取神道流本部道場@千葉・香取 「エイ」「ヤー!」。勇ましいかけ声と木刀の打ち合う音が響く。千葉県香取市、香取神宮のほど近く。約600年連綿と伝えられてきた古武術、天真正伝(しょうでん)香取神道流の本部道場だ。

新着コラム