ひとえきがたり

母恋(ぼこい)駅(北海道、JR室蘭線)

「母」に思いをはせる待合室

「母恋駅を愛する会」が4月11日に駅待合室で催したイベントには約20人が参加した=北海道室蘭市母恋北町

「母恋駅を愛する会」が4月11日に駅待合室で催したイベントには約20人が参加した=北海道室蘭市母恋北町

  • 「母恋駅を愛する会」が4月11日に駅待合室で催したイベントには約20人が参加した=北海道室蘭市母恋北町
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 北海道・室蘭に「母の日」を思い出させる駅がある。母恋駅だ。JR北海道は駅名にちなみ、1984年から毎年5月はじめに「母の日記念乗車券」を発売。近年は約2千枚が毎年完売している。

 ふだんは人もまばらな待合室だが、月1回はにぎやかになる。地元有志でつくる「母恋駅を愛する会」主催のイベントがあるためだ。駅を廃れさせたくないと、96年9月から毎月第2土曜日にマジックショーや昔遊びの会などを企画し、今月の「春の交通安全教室」で225回目。今では企画の売り込みもある。

 「鉄の街」として栄えてきた室蘭市の人口は69年をピークに減ってきた。だが、戦時中は駅も軍需工場に向かう人でいっぱいだったと、愛する会代表の久保田純子(すみこ)さん(89)は振り返る。「駅前は女学校への通学路。母が女手一つで通わせてくれたんです。2歳年下の弟を学徒出陣に送り出したのもこの駅でした」

 待合室の片隅では、関根夫妻の手作り駅弁「母恋めし」が売られている。中身はホッキ貝の炊き込みご飯の握り飯に、卵とチーズの薫製、漬物だ。母恋の語源はアイヌ語で「ホッキ貝のたくさんある所」の意味。そこに妻の久子さん(65)が「お母さんの手作りといえば、おむすび」と「母」のイメージを重ねた。希望者にはレシピの配布も。「だしが違うので、炊きあがるとその家の味になるんですよね」。駅を離れても、母が恋しくなる、おふくろの味なのだ。

文 岩本恵美撮影 山本倫子 

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 JR室蘭線は長万部(おしゃまんべ)駅(北海道長万部町)と岩見沢駅(岩見沢市)を結ぶ本線211キロと東室蘭駅(室蘭市)と室蘭駅(同)を結ぶ支線7キロからなる。

 母恋駅から徒歩3分の母恋富士下は、5月上旬から6月下旬にかけて約30種、130本の桜が咲くお花見スポット。

 道内最古の水族館、市立室蘭水族館(TEL0143・27・1638)は室蘭駅からバスで約15分。トドのショーやペンギンの行進などが楽しめる。今季の営業は10月12日まで。入場料は300円(中学生以下と70歳以上は無料)。

 

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母の日記念乗車券

 母恋―東室蘭の区間で使える母の日記念乗車券(210円)=写真は過去の乗車券。両駅で購入でき、郵送販売もある。「常連さんとのやりとりは年に1回の文通のよう」と、駅業務を委託された中田恵子さん(52)。

(2015年4月28日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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