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建モノがたり

Tree-ness House(東京都豊島区)

多品種が共存 中空の庭園

白い出窓のようなひだ状の開口部は全部で17カ所。屋上へ続く外階段もある=伊ケ崎忍撮影
白い出窓のようなひだ状の開口部は全部で17カ所。屋上へ続く外階段もある=伊ケ崎忍撮影
白い出窓のようなひだ状の開口部は全部で17カ所。屋上へ続く外階段もある=伊ケ崎忍撮影 1階のギャラリー前から見上げた吹き抜けにも植物が見える=伊ケ崎忍撮影

あちらこちらに不ぞろいな出っ張り。しかも植物が生えている。この構造にはどういう狙いがあるの?

 「樹木のような建築を体現したかった」と設計者の建築家・平田晃久さん(48)は話す。

 東京・大塚駅から徒歩10分、昔ながらの家並みも残る住宅街に「Tree―ness House」はある。形も方向も様々な開口部から緑があふれ出て異彩を放つ。六本木でギャラリーを経営する石井孝之さん(56)の自宅だ。1階には知人のギャラリーも入る。

 幹、枝、葉と構造や機能が異なる部分が共存する樹木は、表面にコケやキノコが生えていたり、虫や鳥などがすみかにしていたり。「多様な存在が関係し合い豊かな環境を作り出している」と平田さん。幹となる鉄筋コンクリート造りの「箱」を積み重ね、枝に当たる開口部の植栽スペースに、葉となる植物を植え、中空の庭が実現した。

 植物は、ノイバラやハーブ、ベリー類など120種類以上。植栽を担当したガーデンプランナーの塚田有一さん(52)は、「建物を山に見立て、方位や高さによる日照時間、風通し、土の量などによってどこに何を植えるかを決めました」。ユニットごとの調和に配慮。それぞれ窓越しに見える世界が異なり、季節の移ろいを感じられる。

 仕事柄ギャラリーや美術館など白い壁に囲まれたホワイトキューブに身を置くことが多い石井さん。「家のどこにいても植物が視界に入るのは心地よい。スキップフロアのような造りなので、家族の気配も感じやすいです」

(牧野祥)

 DATA

  設計:平田晃久建築設計事務所
  階数:地上5階
  用途:住宅、ギャラリー
  完成:2017年9月

 《最寄り駅》 大塚


建モノがたり

 大塚駅北口から徒歩3分。果物屋フルーツすぎ(問い合わせは03・3940・1805)では、新鮮な果物を使ったジュース(450円から)や季節のパフェ(今月はメロンパフェ1480円など)を提供。正午~午後7時半(土・祝・休は11時から)。(日)休み、(水)不定休。

(2020年6月16日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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