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建モノがたり

岩見沢駅舎(北海道岩見沢市)

れんがとレール 鉄道の街の「顔」

外壁はガラスの下にれんがが積んである。左側は、観光案内所や市民向け窓口がある市の施設
外壁はガラスの下にれんがが積んである。左側は、観光案内所や市民向け窓口がある市の施設
外壁はガラスの下にれんがが積んである。左側は、観光案内所や市民向け窓口がある市の施設 線路の南北をつなぐ自由通路は幅約6メートル、総延長130メートル。<br />駐輪場と接続しており自転車の往来も多い

60年以上愛された旧駅舎が火事で焼失して20年余り。歴史ある「鉄道の街」に再建された4代目駅舎は今。

 5月下旬の平日。岩見沢駅舎2階の改札周辺の空間には、ベンチで列車を待つ人の姿。下車してきた高校生らは別れがたいのかスマホを手にゲームに興じる。

 「列車を上から眺められる自由通路ではお年寄りが孫を連れて散歩していますよ」。公開コンペで376案から選ばれ設計を担当した西村浩さんは目を細める。

 佐賀県出身で北海道には縁がなかったが、土木畑出身でインフラやまちづくりに関心が深い。商店街再生を手がけた経験もあり、「まちの基点になる駅舎」のアイデアを温めた。

 コンペの最終プレゼンテーションで訴えたのもまちづくりや市民参加を求める方策だった。1階外壁に積まれた刻印れんがはその一つ。1500円の寄付で名前を残すと募集したところ、45都道府県、7カ国の4777人からの申し込みがあった。こうした中から、公共空間に関わり、まちづくりに関わる人が育ってくると経験から感じていた。

 駅舎がガラス張りなのは、中の人の姿が外から見えるように。豪雪に見舞われる冬でなくても周辺の人通りは少ない。「人々の活動を外に見せる」ことを狙った。

 ガラス面を縦に仕切るのは古いレール。駅に隣接してれんが造りの岩見沢レールセンターがあり、道内の鉄道レールの検査、補修、加工を一手に引き受けている。サビ止めの加工やゆがみの補正をし、232本を窓枠として生まれ変わらせた。

 駅舎は2009年度のグッドデザイン大賞をはじめ数々の賞に輝いた。「まちや人の考え方もデザインするようなプロジェクトになったと自負しています」

(鈴木麻純、写真も)

 DATA

  設計:ワークヴィジョンズ(西村浩)
  階数:地上2階
  用途:駅舎、連絡通路など
  完成:2009年


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 岩見沢駅前の天狗(てんぐ)まんじゅう本舗駅前店(問い合わせは0126・23・4605)では、「天狗まんじゅう」(赤、白、茶各110円)や、肉球形の飾りがついた「猫の恩返し」(120円)が人気。「肉まんじゅう」(110円)は、辛口と辛さ控えめの2種類から選べる。午前9時~午後6時、(日)休み。

(2022年6月14日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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