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建モノがたり

大口町立大口中学校(愛知県大口町)

大建築家の思想 卒業後に得心

ドーム形のガラス屋根が覆う中庭は、テニスコート2面分ほどの広さがある。学校建築としては黒川紀章さんの遺作になった
ドーム形のガラス屋根が覆う中庭は、テニスコート2面分ほどの広さがある。学校建築としては黒川紀章さんの遺作になった
ドーム形のガラス屋根が覆う中庭は、テニスコート2面分ほどの広さがある。学校建築としては黒川紀章さんの遺作になった 校舎外周部に設置された県内産木材の垂直ルーバー

愛知県北西部の小さな町の中学校。透明なドームが地域のランドマークになっている記者の母校を、改めて訪ねてみた。

 愛知県大口町にあった2校が統合し、町唯一の中学校となった大口中学校。統合に際して新築された校舎は、同県出身で国立新美術館などを設計した世界的建築家・黒川紀章さん(2007年、73歳で死去)が率いる黒川紀章建築都市設計事務所が手がけた。

 完成して2年目の09年に入学した記者は当初、コの字形の校舎の中庭を覆うガラスのドーム屋根に目をひかれた記憶がある。「つどいの広場」と呼ばれる中庭はガラス窓に囲まれボール使用などはできなかったが、生徒が自由に過ごせる場所だった。

 毎日を過ごす校舎が著名な建築家の作品とは級友たちは知らないようだった。が、建築に少々興味があった母の話から、この建物には「思想」が表現されているらしいと感じていた。

 「大口中学校では・・・『共生の思想』をコンセプトとした」。黒川さんは生前、大口中で開かれたワークショップで語っている。対立したり矛盾したりするけれど互いに必要とするもの――「自然と人間」や「内部の安全と外部への開放」の両立を採り入れようとした。

 校舎をぐるりと囲んで木製の垂直ルーバーが設置され、木漏れ日のような光が床に映る。広場はイベント開催など地域にも開かれるが、校舎内の扉によって非開放部分とエリア分けが可能だ。「共生」への黒川さんの思いを今更ながら感じる。

 「(ドームの下で)雨でも部活動ができる」と話す野球部2年の佐藤誠史郎さん。「(コの字形の校舎で)まだ時々迷うことがあります」と屈託ない2年の船橋羽奏さん。当時、教頭として校舎建設に尽力した斉慶辰也校長は「将来は生涯学習施設として開放し、卒業生が町に貢献できるサイクルを作りたい」と話した。

(片野美羽、写真も)

 DATA

  設計:黒川紀章建築都市設計事務所
  階数:地上3階
  用途:中学校
  完成:2008年

 《最寄り駅》 柏森駅からバス


建モノがたり

  徒歩約分の「すし処 初音」(問い合わせは0587・96・0015)では、人気の穴子寿司(2800円)をはじめ、店主が厳選したネタの握りや旬の食材を使った一品料理が楽しめる。午前11時半~午後2時、午後5時~午後10時(ラストオーダーは30分前)。(月)((祝)の場合は翌日)休み、不定休あり。

(2022年7月26日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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