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建モノがたり

東戸塚教会(横浜市)

雲間から光 明るい礼拝の場

正面の壁は細いレッドシダーの板を組み合わせ、凹凸感を出した
正面の壁は細いレッドシダーの板を組み合わせ、凹凸感を出した
正面の壁は細いレッドシダーの板を組み合わせ、凹凸感を出した 聖壇の横には屋根の傾斜に合わせて設計されたパイプオルガン。空をイメージした椅子のクッションはテキスタイルデザイナー安東陽子さんが手がけ、すべて微妙に色が違う

雲? うろこ? 民家に囲まれて、おとぎ話に出てくるような三角屋根の家が立つ。てっぺんには十字架が……。

 会社員だった藤田穣牧師(81)が50年前自宅で伝道を始め、設立された日本キリスト教団東戸塚教会。最初4人だった信徒が次第に増え、30年余り前には牧師宅を教会に改装した。それからさらに十数年、悲願の新会堂建設計画が動き出した。

 設計を引き受けた平田晃久さん(51)に、藤田牧師が話したのは「ヤコブのはしご」。天からのはしごが地上に伸び、天使が上り下りするという、旧約聖書に記された原風景だ。

 「雲の合間から光の筋が落ちてくるイメージが湧いた」と平田さんは話す。さらに牧師らと話す中で、天幕(テント)を張り移動可能だった原初的な礼拝の場と通じるような建築という方向性も見えてきた。

 雲のような白い屋根は、鉄板24枚を互いにすき間を空けて重ねた。山の形のフレームごと片側7本ずつの柱が支える。「ふわりと浮かぶ」感じを出すため、柱はできるだけ細くした。

 礼拝堂に入ると、吹き抜けの頭上、プレートの間から日光が降り注ぎ、空の様子がうかがえる。ガラス張りの壁面からの光もあって、藤田牧師は「こんなに明るい教会はなかなかない」と笑う。

 真っ白い屋根と対照的に、正面の壁や内装に木材を多く使ったのは、「天」に対する「地」のイメージからだ。木の素材感を残し、地上で生きる人間の営みを意識した。

 「教会の人々にとって一番自然なものにしたかった」という平田さんは「長く続くコミュニティーの人々が集い、オルガンの音が響くのを聞いた時が一番感慨深かった」と振り返った。

(高木彩情、写真も)

 DATA

  設計:平田晃久建築設計事務所
  階数:地上2階
  用途:教会
  完成:2015年

 《最寄り駅》 東戸塚駅からバス


建モノがたり

 東戸塚駅から徒歩5分のアイス工房メーリア(問い合わせは045・825・2291)は隣接する肥田牧場が直営する。ジェラート(シングル387円、ダブル490円)はコクがあり人気のミルク味のほか抹茶、キャラメル、塩など約10種がそろう。プレミアム(現在はピスタチオ味、490円)、ソフトクリーム(347円)も。8月中は午前11時~午後7時(ラストオーダーは15分前まで、(土)(日)(祝)は10時から)。原則(火)休み。

(2022年8月2日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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