大阪と京都の中間に位置するベッドタウン。住宅地の中で異彩を放つ「金属のかたまり」は何?
1962年創業のナガノサイエンス(大阪府豊中市)は、医薬品の品質維持に必要な安定性試験機器の国内トップ企業。老朽化した高槻市の工場の建て替えに当たり、2002年に父から社長を継いだ長野大造さん(60)は「日本の精密な技術力を表現する建築」にしたいと考えた。
海外企業ともパートナーを組んで世界に販路を広げる戦略の一環だ。ここ20年ほどで周囲にいくつかあった他の工場はマンションに建て替わっていった。「ここを売って郊外に移り、3倍の面積にするのが普通だったでしょう」と振り返る。
しかし選択したのは、アクセスのよい高槻にとどまり、工場の位置づけを見直す方向だった。板金加工や量産などの機能は外部化し、製品開発に加えてサービス分野でも新たな価値を生み出す「マザーファクトリー」をめざした。
建築家の山口隆さん(70)が提示したのは、シンプルな直方体の建物。「工場として一番合理的。形の遊びはしていません」。その上でアルミの羽板を並べたルーバーで「もう一つのサーフェス(表面)」を作った。工場である以上、多くの換気設備や配管は欠かせないものだが、美観を損ねがち。解決策として、全体をルーバーの〝皮膜〟ですっぽり覆い隠したのだ。
簡潔な形状の唯一の変化が3カ所の切り欠き部分。2カ所のテラスは全面ガラスを通して景色を見晴らし、屋外のように日光を浴びることができる。
床にアルミ材を敷いた最上階のオフィスは、靴を脱いで上がる。「海外の人たちは楽しみますね」と長野さん。データ分析などに携わる入社3年目の浜添栞さん(26)は「JRに乗っていて、住宅地のなかにポツンと見えるのが面白い」と話した。
(島貫柚子、写真も)
DATA 設計:山口隆建築研究所 《最寄り》高槻市 |
徒歩約15分のヴァスコ・ダ・ガマ本店(問い合わせは072・683・8558)では20種類以上のスパイスをブレンドし、野菜とフルーツがたっぷり溶け込んだ欧風カレーが味わえる。「ビーフカレー」(800円)など5種。付け合わせの自家製ピクルスも絶品。[前]11時半~[後]2時半、5時半~9時 (土)は8時45分まで)。(日)の夜、(月)休み。