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アートリップ

津波浸水深サイン「浸水どうぶつものさし」 
マスナガデザイン部 増永明子作(大阪市西区)

みんなで作った防災標識

九条北小学校正門内側玄関で=滝沢美穂子撮影
九条北小学校正門内側玄関で=滝沢美穂子撮影
九条北小学校正門内側玄関で=滝沢美穂子撮影 堀江小学校。乳牛は1・5メートルの津波の危険を知らせる=滝沢美穂子撮影

 町工場と住宅が立ち並ぶ、昔懐かしい雰囲気の大阪市西区九条地域。九条北小学校正門内側の壁に、キリンのイラストと「3・5メートル」の数字が見える。可愛らしい表情に心が和むが、実は大地震が発生した際に想定される津波の高さを表したもの。南北を川に挟まれ、中央にも川が流れる同区は2013年、南海トラフ巨大地震での津波による想定被害者数が市内最多と発表された。それを受け、14年、同区が独自にデザインした標識「浸水どうぶつものさし」だ。

 標識は区民らの共同作業で誕生した。13年、区内で活動するデザイナーの増永明子さん(47)らは、同小の5年生と街を歩き、彼らが目に留める標識を探った。子どもたちは警告するような赤や黄の標識は指さすが、青いものは選ばなかった。「大地震はいつ起きるか分からない。津波の危険を怖がらせずに知らせるには、生活になじみやすい青い標識がいいのでは」と増永さん。キャラクターの要素も盛り込んで、0・5~3・5メートルの津波の高さを日本犬やライオンなどそれぞれの体高で表す7種の「どうぶつ」の青いステッカーを制作。小中学校の壁や校門などに貼り、グッドデザイン賞も受賞した。

 17年、同区内の堀江小学校では、標識の横に高さを示す青い線と「たかいばしょへにげろ!」という文言を、児童が書き加えた。防災意識が着実に根付いている。

(井上優子)

 大阪市西区

 大阪市のほぼ中央に位置する。中央に木津川、南北の境に土佐堀川~安治川、道頓堀川~尻無川が流れ、海には面していないが、海抜が低く、津波の被害が危惧される。「浸水どうぶつものさし」の設置場所は、区内の駅や図書館、商店街など約100カ所。一部は多言語表記にし、パネル化も進めている。2015年度のアンケート調査によると、区民の認知度は84.6%とされる。

 《作品へのアクセス》 それぞれ九条駅、西長堀駅から徒歩10分。


ぶらり発見

駅弁「百年の旅物語 かれい川」

 九条駅すぐそばのいも福(TEL06・6582・8808)の「芋棒ポテト」=写真=は、棒状の紅芋を蜜に漬け込んだ大学芋だ。低温で1時間かけて揚げた芋は、ふんわり中まで柔らかい。300グラムで5~7本、700円。午前11時~なくなり次第終了。不定休。

 本町駅から徒歩10分の靱(うつぼ)公園。5月になると、園内のバラ園で約170品種3千株のバラが咲き誇る。公園は、山から海までの地形をイメージしており、なだらかな丘から噴水に向かって歩くと爽快だ。

(2019年3月5日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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