読んでたのしい、当たってうれしい。

桂望実さん 青柳総本家の青柳ういろう ひとくち

桂望実さん

 高校生の時に名古屋のお土産でもらったのが初めての出会いでした。見た目がようかんと似ているので、同じようなものだと思ったら全く違っていたんです。
 淡く優しい味わいと、もっちりしたおモチのような食感ですんなりとのみ込めた。当時は味が強いものが多かった記憶があり、控えめな味わいなのにおいしかったので、驚いたんです。


 甘さの強いようかんは一切れで十分ですが、私はがっついてたくさん食べたい方なので、20センチ以上ある一本をガブッと食べてしまったことも。「今日はここまで」とフィルムにペンで線を引いても、いつの間にか……。そんなことが続いて、今は「ひとくちサイズ」に落ち着きました。


 昔は通販がないので手に入らなくて、会社員時代は名古屋出張の度に買い込んでいました。作家になってからは、ういろう好きが代々の担当編集者さんにも引き継がれていて、お土産でいただくことが多くなりました。小説を脱稿したごほうびにしています。


 食べたことがない編集者さんには、お出しして反応を見ています。「くずもちみたい」とおっしゃった方に思わず「全然違う!」と突っ込んでしまったこともあるんです。


 派手さはないういろうですが、ひたむきにがんばっている感じが好きです。私は目立たない存在こそが、社会を支えていると思っています。そんな人たちが主人公の小説を書いていると、ういろうも光があたるといいなと。今後、私の小説の中にも、ういろうを食べるシーンが登場するかも?

(聞き手・佐藤直子)

 

 ◆◆大須本店 名古屋市中区大須2の18の50(☎052・231・0194)。しろ、くろ、抹茶、上がり、さくらの5種。5個497円、10個1080円など。午前10時~午後6時半。原則水曜休み。県内のサービスエリアや一部百貨店のほか、オンラインショップ(https://shop.aoyagiuirou.co.jp/)でも販売。


   かつら・のぞみ 小説家。会社員やフリーライターを経て、2003年「死日記」でエクスナレッジ社「作家への道!」優秀賞を受賞しデビュー。著書にベストセラーにもなった「県庁の星」(小学館)、「腕が鳴る」、本日発売の文庫本「残された人が編む物語」(いずれも祥伝社)など。

(2025年6月12日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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