NCTジェヒョン主演「6時間後に君は死ぬ」
イ・ユンソク監督のインタビュー どうして日本のミステリーを韓国で映画化するのか。日本で映画づくりを学び、日本人作家の高野和明の「6時間後に君は死ぬ」を撮ったイ・ユンソク監督に聞きました。
近年、LGBTQ(性的少数者)にまつわる作品が増えている韓国。6月13日に日本で公開されるイ・オニ監督の映画「ラブ・イン・ザ・ビッグシティ」(2024)もその一つだ。主人公は、自由奔放な性格ゆえ、周りに「軽い女」と誤解され、人知れず傷ついているジェヒ(キム・ゴウン)と、ゲイであることを周りに隠して生きているフンス(ノ・サンヒョン)。男女のロマンスではなく友情を描いた作品だ。
原作はパク・サンヨンの小説「大都会の愛し方」。2022年国際ブッカー賞ノミネートで注目され、日本語版も出ている。国際ブッカー賞といえば、昨年ノーベル文学賞を受賞したハン・ガンが2016年に「菜食主義者」で受賞し、世界で知られるきっかけとなった。
映画では、フンスがゲイだと偶然ジェヒが知り、2人は急速に親しくなる。それぞれ周りに理解されない孤独を抱えていたが、共に最高の理解者となっていく。恋愛話に花を咲かせ、一緒にパックをしながら寝っ転がる幸せそうな2人の姿に、まるごと受け入れてくれるたった一人のありがたさを感じた。
フンスはジェヒと親しくなる前、母にアメリカに行きたいと打ち明けていた。韓国ではLGBTQに対する偏見があり、生きづらさを感じていたのだ。
実際、韓国は日本に比べてクリスチャンが多く、キリスト教団体を中心に同性カップルへの反発が根強い背景もある。昨年、レズビアンを描いたイ・ミラン監督の映画「娘について」の上映をめぐり、大田(テジョン)市が上映撤回を求め、話題になった。性平等週間の大田女性映画祭での上映だったが、クィア映画であることが理由で上映できなくなるという、残念なニュースだった。
一方、今年4月、俳優のユン・ヨジョンが息子がゲイであることを打ち明けたが、韓国世論の大半は肯定的な受け止めだった。ユン・ヨジョンは2021年に映画「ミナリ」でアカデミー賞助演女優賞を受賞し、一目置かれているというのもある。ユン・ヨジョンの息子は同性婚が合法化されたニューヨークで結婚式を挙げたという。
韓国も日本同様、同性婚は法的に認められていないが、昨年7月、同性カップルのパートナーが国民健康保険の被扶養者として認められないのは不当だと訴えた訴訟で、大法院(最高裁)が原告の訴えを認める判決を言い渡した。同性カップルの権利拡大の方向で動いているのは確かだ。
さらに昨年10月には、11組の同性カップルが同性婚を認めない現行の民法は違憲だとして、韓国各地の裁判所に婚姻届の受理を求める訴訟を一斉に起こした。
日本ほど多くはないが、カミングアウトして活動する芸能人の存在も大きい。2000年にはタレントのホン・ソクチョンがゲイであることをカミングアウトし、一時はテレビやラジオに出られなくなっていたが、徐々に社会の認識が変わり、今では人気タレントとして活躍している。
「ラブ・イン・ザ・ビッグシティ」に話を戻すと、ジェヒとフンスの同居生活は、本人たちは楽しくても、周りには理解されない。理解できずに離れていく人もいれば、理解しようと努力する人もいる。こうして少しずつ社会が変わっていくのかもしれない。
◆『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』
◆6月13日(金)より全国ロードショー
◆配給:日活/KDDI
◆ⓒ 2024 PLUS M ENTERTAINMENT AND SHOWBOX CORP. ALL RIGHTS RESERVED.
成川彩(なりかわ・あや)
韓国在住文化系ライター。朝日新聞記者として9年間、文化を中心に取材。2017年からソウルの大学院へ留学し、韓国映画を学びつつ、日韓の様々なメディアで執筆。2023年「韓国映画・ドラマのなぜ?」(筑摩書房)を出版。新著にエッセー「映画に導かれて暮らす韓国——違いを見つめ、楽しむ50のエッセイ」(クオン)。
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