五十三次 京三條橋
江戸・日本橋から約500キロ、東海道五十三次の終着点は京の玄関口・三条大橋。東山や八坂の塔を背景に、頭に薪をのせて売り歩く大原女、茶筅をさした竹棒をかつぐ茶筅売り、衣を頭にかぶった被衣姿の高貴な女性が行き交う。
まん丸な目と鼻の穴に、歯が抜けたような口元。間の抜けた表情だが、ついじっと見てしまう。
作者の青田真也さんは、既製品の表面をそぐことで、物の本質を問い直す作品を制作するアーティスト。題材は、役割や機能が明確なものを選ぶ。「どう使われるか分かるものを、あえてあいまいな状態にしたい」と話す。また、名前をつけるとイメージがついてしまうため、タイトルはつけない。
この面は、元は般若の面だった。彫刻が施された表面を紙やすりで削り、角も丸くした。
般若の面は、女性の嫉妬や怒り、恨みなどを表すもの。しかし、削ることで怖い顔が一転。誰もが実は、かわいらしい内面を持っているのかもしれないと思わせる。