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美博ノート

青田真也「untitled」

みえるような、みえないような展(高浜市やきものの里かわら美術館)

青田真也「untitled」
2007年

 まん丸な目と鼻の穴に、歯が抜けたような口元。間の抜けた表情だが、ついじっと見てしまう。

 作者の青田真也さんは、既製品の表面をそぐことで、物の本質を問い直す作品を制作するアーティスト。題材は、役割や機能が明確なものを選ぶ。「どう使われるか分かるものを、あえてあいまいな状態にしたい」と話す。また、名前をつけるとイメージがついてしまうため、タイトルはつけない。

 この面は、元は般若の面だった。彫刻が施された表面を紙やすりで削り、角も丸くした。

 般若の面は、女性の嫉妬や怒り、恨みなどを表すもの。しかし、削ることで怖い顔が一転。誰もが実は、かわいらしい内面を持っているのかもしれないと思わせる。

(2017年8月29日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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