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美博ノート

「譬諭(たとえ)草をしへ早引」

こまったときのタコだのみ(鳥羽市立海の博物館)

鯨と海女の研究室(個人)蔵
鯨と海女の研究室(個人)蔵

 タコと海女が描かれた浮世絵には、しばしば性的な表現が見られる。タコが海女にからみつく構図は明治期まで受け継がれ、中でも19世紀初めに葛飾北斎が描いた春画「蛸(たこ)と海女」が有名だ。一方、同時期には性的表現を離れ、単に両者をセットとして登場させる構図も現れる。「タコが、とってつけたように描かれている作品もあるんです」と縣(あがた)拓也学芸員。

 歌川国芳による本作は、腰みのを着けた海女の両脇に、控えめにタコの姿が。ぬれた髪がエロチシズムを感じさせるが、着衣で、直接的な表現はない。「絵師たちが性的な視点よりも、海女の神秘性や美しさ、漁の技術に注目するようになった表れなのでしょう」

(2018年8月21日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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