朝日
「絵を見て、庭にあった枝分かれのハナユズの木だと思いました」と、学芸員の小南桃生さんは二股の木の写真を取り出した。
画家の元永定正(1922~2011)は、10代のころ漫画家を志した。郵便局員や社交ダンス講師などの職を経て、抽象画家に転向。55年、関西の前衛美術集団「具体美術協会」を主導した吉原治良(じろう)の誘いで同集団に参加し、「人のまねをするな」との教えのもと、既成概念にとらわれない作品に挑んだ。
本作は縦225×横182センチの大作。たらし込みという日本画の技法を油彩に取り入れた。周到なデッサンをしてから、キャンバスを斜めに傾け、絵の具を滴らせた。傾ける角度と絵の具が流れる偶然性とのバランスが、面白い形を生んでいる。
「他人の評価を気にしがちなインスタ映えがはやる今、自由に描く元永の絵は私たちに強く訴えかける」と同館学芸員の藤本奈七さん。