読んでたのしい、当たってうれしい。

美博ノート

摺箔鱗文様浅葱地銀箔(すりはくうろこもんようあさぎじぎんぱく)

近世能装束の世界 用の美 武家貴族の美意識(岐阜市歴史博物館)

摺箔 鱗文様 浅葱地銀箔 平成
摺箔 鱗文様 浅葱地銀箔 平成

 唐織の下に着る「着付」として用いられる摺箔は、繻子織の絹布に金や銀の箔を接着して文様を施す技法の名称でもある。本作は、浅葱色の生地の表全面に三角形が連なった銀箔が施され、魚のうろこのようにも見える。

 こうした文様の摺箔は、嫉妬や執着心を表す役柄で多く用いられる。「源氏物語」を題材にした「葵上」では、六条御息所の生霊を演じるシテが身につけ、恋敵である葵上への嫉妬心を表現している。

 本作は江戸時代の作品を、山口能装束研究所(京都市)の山口憲所長が復原(ふくげん)した。同研究所は当時の材料や技術を研究し、多くの貴重な能装束を現代によみがえらせている。今展ではオリジナルと、復原された装束を同時に鑑賞することができる作品もある。

 学芸員の社本沙也香さんは、「復原作品を通してオリジナル制作当時の色合いや風合いを想像し、能装束に込められた美意識や、背景にある文化を感じてほしい」と話す。

岐阜市歴史博物館
https://www.rekihaku.gifu.gifu.jp/

(2021年7月27日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

美博ノートの新着記事

  • 五十三次 京三條橋 江戸・日本橋から約500キロ、東海道五十三次の終着点は京の玄関口・三条大橋。東山や八坂の塔を背景に、頭に薪をのせて売り歩く大原女、茶筅をさした竹棒をかつぐ茶筅売り、衣を頭にかぶった被衣姿の高貴な女性が行き交う。

  • 五十三次 府中 日暮れて間もない時分、遊郭の入り口で、ちょうちんを持った女性と馬上の遊客が言葉をかわす。馬の尻にはひもでつるされた馬鈴。「りんりん」とリズム良く響かせながらやってきたのだろうか

  • 五十三次 大磯 女性を乗せ、海沿いの道を進む駕籠(かご)。担ぎ手たちが「ほい、ほい」と掛け声を出して進んだことから「ほい駕籠」とも呼ばれた。

  • 三菱十字号 トヨタ博物館「お蔵出し展」

新着コラム