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美博ノート

龍巻

碧南市藤井達吉現代美術館「川端龍子展 日本画壇に挑戦し続けた革命児」

1933年 293.0×355.0センチ 大田区立龍子記念館蔵

 突風に巻き上げられた海の生き物が、空から降ってくる--。奇想天外な光景を描いたのは、日本画家の川端龍子。本作を手がけた1930年代前半、経済恐慌や満州事変、5・15事件が続き、日本は国際的に孤立する道を進んでいた。時代を覆う不穏な空気を、荒れた海に表している。

 洋画から日本画に転向して院展で活躍した龍子は29年、在野の美術団体「青龍社」を旗揚げ。「会場芸術」と称し、時代を投影した画題を多くの人が鑑賞できる大画面に描いて人気を集めた。

 本作は、「太平洋」シリーズの第1作。日米の緊張関係など太平洋を取り巻く情勢をテーマに、他3作も次々と発表した。「戦時色が濃くなっていく社会を克明にとらえ、絵画に昇華させた。時代を経ても古びることなく、今にも通じるメッセージが見えてくる」と、大田区立龍子記念館副館長の木村拓也さんは話す。

 

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