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美博ノート

三岸節子肖像

一宮市三岸節子記念美術館 「岡田三郎助 優美な色彩・気品ある女性像」

1923年 岩絵の具・カンバス 一宮市三岸節子記念美術館蔵

 美人画で知られる洋画家の岡田三郎助。本作はカンバスに日本画で用いる岩絵の具で描かれた。その細かい粒子が、原料である鉱物特有の粗い質感を画面に与えている。本展では同じ女性の横顔の絵がほかに2点並ぶ。同様の色を使って油彩で描いたものが1点、もう1点は女性の服を青い浴衣に変えたもので、こちらも油彩だ。
 岡田は留学先のフランスで、柔和な女性像が得意なラファエル・コランに師事した。「帰国後は日本的な女性像を模索しました。着物姿をモチーフに、岩絵の具や和紙など日本画の画材を実験的に採り入れ、独自の表現を追究したのです」と学芸員の杉山章子さんは話す。
 モデルは女子美術学校の教え子、三岸節子だ。岡田は当時、画業のかたわら教壇に立っていた。三岸は女子美術学校を首席で卒業し、日本とフランス両国で活躍する洋画家となった。後年、絵にはいかに気品が大切であるかを岡田に学んだ、と語っている。

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