ふるさとの家
復員後に描いた、生家の穏やかな日常
濃紺の背景が広がる六曲一双の屛風(びょうぶ)。暗がりに金色の雑草が伸びる。生誕140年を迎えた日本画家、川端龍子の大胆な発想と繊細な表現が光る代表作だ。
30歳で院展に初入選した龍子は色鮮やかな大型作品で活躍した一方、画壇内の批判を受けて日本美術院を脱退。主流だった繊細巧緻(こうち)な画風とは一線を画し、「健剛なる芸術」を掲げて豪快な作品を発表した。
「本作には技巧派の一面も現れている」と、大田区立龍子記念館副館長の木村拓也さん。姉妹作「草炎」では真夏の草むらを描いたが、本作にはススキやオミナエシなど秋の草も。数種類の金泥を使い分け、奥行きを表現した。
蒔絵(まきえ)のようにも見える濃紺と金の配色は、紺地に金色の経文を書いた装飾経に着想。神聖さが漂う表現に、雑草の生命力を重ねた。「院展時代からの自然賛美の精神も描かれていて、若き日の集大成といえます」