五十三次 京三條橋
江戸・日本橋から約500キロ、東海道五十三次の終着点は京の玄関口・三条大橋。東山や八坂の塔を背景に、頭に薪をのせて売り歩く大原女、茶筅をさした竹棒をかつぐ茶筅売り、衣を頭にかぶった被衣姿の高貴な女性が行き交う。
愛知県岡崎市の天台宗瀧山寺に伝わる本作は、源頼朝の菩提を弔うために造られたという。運慶・湛慶父子の作とされ、写実的で充実した体、張りのある力強い顔立ちなどにその作風が見られる。
造像の年代や背景を記した「瀧山寺縁起」には、像の中に頼朝の歯などを納めたとの記述もある。X線撮影により、頭部内に針金で固定された紙包みのようなものがあるとわかった。寺だけでなく地域の歴史も記された縁起の信頼性が改めて確認されたといえる。
古代には有力豪族・物部氏などの勢力下にあった岡崎は、熱田神宮の大宮司を担った藤原氏系の一族が有力になった。瀧山寺へ熱心に寄進を行った熱田大宮司家の娘の一人が頼朝の母となった。
この像を造立した瀧山寺の住職・寛伝は頼朝のいとこにあたるという。古くから中央の政権と関わりの深い岡崎の歴史を物語っている。