五十三次 京三條橋
江戸・日本橋から約500キロ、東海道五十三次の終着点は京の玄関口・三条大橋。東山や八坂の塔を背景に、頭に薪をのせて売り歩く大原女、茶筅をさした竹棒をかつぐ茶筅売り、衣を頭にかぶった被衣姿の高貴な女性が行き交う。
花瓶いっぱいに咲きほこるバラ。バラは和田英作(1874~1959)が好んで描いたモチーフだ。
見ることを徹底した画家は、描くよりも見る時間が長かったといわれる。「筆遣いがわかるくらい軽いタッチで描かれているのに、こぼれんばかりの鮮やかな姿に見とれます」と学芸員の古池幸代さん。
見続けているうちにみずみずしかった花はしおれ、枯れて落ちてしまうものもでてくる。画面にはそうした姿も描かれ、すべてを含めたいのちの美しさが表現されている。
鹿児島出身で東京美術学校校長も務めた和田は戦争末期、つてをたどって現在の知立市に疎開、そのまま6年間暮らした。
70歳を過ぎた画家の生活を地元の人が支えた。キャンバスの木枠を作製してもらったり、農家からもらった野菜や果物を描いたり。「注文を受けて名古屋の知人がバラの花を届けたこともあったようです」