読んでたのしい、当たってうれしい。

美博ノート

鉄釉筋文六寸皿

新収蔵品展(豊田市民芸館)

水野雄介 口径19・0×高さ3・9センチ
水野雄介 口径19・0×高さ3・9センチ

 縁のあるモダンなデザインに、淡黄色の灰釉。本作は江戸時代から作られている瀬戸の代表的な器「石皿」の伝統を受け継いだ。

 一方で、洗練された形や使いやすさを考慮した小さめのサイズに現代的なセンスが感じられる。

 ガラスのような透き通った色味や貫入(細かいひび)、シンプルな文様。「使うごとに貫入に渋みが加わり、なじんだ色に育ちます」と学芸員の岩間千秋さんは話す。東京・駒場の日本民芸館が主催する「日本民芸館展」で2017年度に奨励賞を受けた。

 作者の水野雄介は、約300年続く瀬戸本業窯の8代目となる予定の若手。本業窯には祖父の6代目半次郎の頃、バーナード・リーチや浜田庄司も訪れたという。

 日本民芸館の改築時、一部を譲り受けて開館した豊田市民芸館。本展では14~20年度の収集資料から日本民芸館展関連資料をはじめ約200点を紹介する。

(2022年2月15日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

今、あなたにオススメ

美博ノートの新着記事

  • 上絵金彩綾棒踊(あやぼうおどり)図花瓶 山吹色から青色へ。本作品にも見られる鮮やかなグラデーションを得意としたのは明治時代に活躍した京都の窯元・九代帯山与兵衛(1856~1922)。技巧的な造形と華麗な色使いが、海外で高い評価を得た。

  • 釉下彩透彫(ゆうかさいすかしぼり)朝顔文花瓶 全体を包み込むように、大輪の花を咲かせる朝顔。透かし彫りが涼やかな本作品は、京都の窯元・七代錦光山宗兵衛(1868~1927)が、新しい技術や流行を取り入れて制作した。

  • 上絵金彩花文麒麟鈕(きりんちゅう)大香炉 墨色で丹念に描かれた木目模様。ふたには透かし彫りが施され、最上部に構える麒麟(きりん)の小さな牙が何本も見える。

  • 徳川家康画像(部分) 徳川家康晩年の肖像は、九男で尾張家初代の徳川義直(1600~50)が描いたものだ。面長でふくよかな顔、福耳、小ぶりな口などの特徴を捉えている。

新着コラム