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美博ノート

ポリゴン、ヴィンターライゼ/冬の旅 コーヒーセット

岐阜県現代陶芸美術館「タピオ・ヴィルカラ 世界の果て」

ローゼンタール製 1980年 エスポー近代美術館/TWRB財団蔵©Ari Karttunen/EMMA

 フィンランドのデザイン界を牽引(けんいん)したタピオ・ヴィルカラ。多角形を意味する「ポリゴン」は、ドイツの食器メーカー「ローゼンタール」のためにデザインした磁器のシリーズだ。

 シンプルだが、十二角形のフォルムが白磁を際立たせている。そこに、妻で陶芸家のルート・ブリュックが絵付けの図案を起こした。
 詩的な作品が多いブリュックが描いたのは、母親の故郷・カレリア地方の冬景色だ。細い線で表現した雪原の木々と、白地に映えるパステルカラーの小さな家。「厳冬にあっても温かなフィンランドの暮らしを象徴するようだ」と、学芸員の立花昭さんは話す。
 ラップランドと呼ばれる北極圏域の原野の湖畔に立つ小屋で、ヴィルカラとブリュックは電気も水道もない素朴な暮らしを楽しんだ。フィンランドの自然や文化は、二人の作品のそこかしこに垣間見える。本作は、そんな二人の希少な合作だ。

 

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